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ゾロサン

2012/3/17更新

ゾサでとある携帯ＣＭパロでなく、
懐かしの『ちょびっツ』パロでございます。








――――――――――――――――――――





世の中には人型のパソコンが溢れていた。
ゾロは大学生になり、山に囲まれた田舎からここ東京へ出てきた。

そのため、はじめはひどく驚いた。
人が多いのか、パソコンが多いのか、とにかく何もかも多かった。
山の道をやっとのことで覚えたというのに、こうも同じビルだらけでは・・・
借りたアパートまで一体どれ程の時間が必要となるのだろうか。


それでも何とか日々の生活をこなしていた。
大学は午前中の授業には遅刻してしまうことが多いが、
友人が迎えに来てくれるようになり、改善された。


「おーいゾロ!!起きろー!!。」

ドアの外から声がする。
ガチャリとドアを開ける。

「ウソップ。」

「ウソップ。じゃねぇほれ、早く仕度せんか。」

「悪ぃ。」

こうして二人並んで大学へ向かう。

「なぁ、お前もパソコン持ったらどうだ？」

「・・要らねぇ。」

「せめてモバイル持てよ。ほら俺のみたいな。」

ウソップがその肩に乗っていたものを紹介する。
それは手乗りサイズで狸のようなトナカイのような、

「アニマル型のモバイルパソコンだ。ほれ挨拶してみろ。」

『俺の名前はチョッパーだよろしくな!!』

「・・・よろしく。」

「かぁーーいぃーーだろう!!」

「・・・まぁ、な。」

「こんなんでも結構機能は多いし、道案内とかしてもらえるぞ。」

「・・・・・。」

「お前にはかなり必要な気がするんだが。」

「・・・・・。」

「とりあえず、その為にもバイトしろ!!!!!」

そんなこんなでウソップのバイト先の居酒屋でバイトすることになった。
そうしてなんとかモバイルパソコンが買えるだろう金額が貯まった。
これだけ貯まると使いたくないのだが、毎朝迎えに来るウソップに申し訳ないので、買う事にする。


電気屋のショーウィンドウには人型のパソコンが飾られている。
特徴的な耳の部分以外は本物の人間と変わらないように見える。
ゾロは何度見ても不思議に感じていた。

店内に入ると、最新型を紹介されたりしたが、所持金を伝えると簡単に去って行った。
これが人間と機械の違いかと思う。

適当に店内を見渡し、モバイルパソコンのコーナーを見るが、
どれを選んだら良いのかまるで分からなかった。
機能の説明が書いてあるが、専門用語ばかりで理解できない。
やはりウソップを連れて出直すべきかと引き返そうとしたとき、視界の端に金色が見えた。

そこには人型のパソコンが置いてあった。
金色の髪の男モデル。

ゾロは何故だかそのパソコンが気になり、近づいて行った。


(・・・綺麗な奴だな。)


説明書きを見てみると名前はサンジ(中古品)と書かれていた。
そして機能欄に『料理』と書かれていた。
毎日、コンビに弁当だったゾロはそのワードに強く惹かれた。
どうせ買えないだろが、と値段を見るとそれはゾロの所持金なんとか買える値段だった。


レジに向かい、気づいたら購入手続きを終えていた。
起動の仕方を教わり、さっそくパソコンを起動させる。

ゆっくりと目を開けたサンジは思ったとおり綺麗な目をしていた。
ゾロを確認するとにっこりと微笑んだ。


ありがとうございました――――


サンジは後ろ着いてきた。
パソコンの扱いが分からず沈黙が続いた。
すると後ろから声が聞こえた。

「名前聞いてもいいか？」

「・・・俺はゾロだ。」

「ゾロか、これからよろしくな。」

ニコリと笑う顔はとても柔らかくて、機械には見えなかった。

なんとか家に着くと、サンジに説教された。
なんであんなに遠回りをしたのかと、方向音痴野郎と。

パソコンというものはこんなにも生意気なものだったのだろうか。
だが、作ってくれた夕飯は本当に美味かった―――

ゾロはやはり買って良かったなと思った。


翌朝、ウソップがいつものように迎えに来た。

「ゾローーーーー」

ゾロの代わりにサンジが扉を開ける。

「あっこんちは・・・ってパソコン!!??」

「よろしく。」

「へぇ～ちょっと見ても良いか？」


ゾロがまだ布団にくるまり寝ている間に、ウソップはズカズカとあがりこんでくる。
その音にゾロも布団から顔をだす。
すると驚きの光景が広がっていた。

「お前っ・・・何してんだよ!!」

「はっ何って？」

ウソップはサンジの服を脱がしていた。
そしてパンツも脱がそうとしているところだった。

「・・・・変態か。」

「人聞きの悪いことを言うでない!!!!!
まったく、どこの製品か見るだけだっつの！！」

「・・・あぁ・・あぁ？」

「分からない奴は黙ってろ。」

ウソップにピシャリと言われ、仕方なく黙るが・・
いくらパソコン相手とはいえ、
恥ずかしい気持ちが消えないのは田舎育ちが原因なのか。

「ゾロ、これ随分古いぞ？良いのか？」

「・・・何か悪いのか？」

「ん～まぁ使えることには使えるが、
OSだけでも新しいのにした方が良いぞ。」

「ふ～ん。」

「まぁ、今の人格データとかは消えるけどな。」

「・・・・は？」

「これ中古か？結構データ詰まってんな。新品じゃねぇだろ。」

「まぁな・・・」

「なおさら初期化したらどうだ？空き容量も増えるぜ？」

「・・駄目だ。」

「？」

「そいつの飯、美味いから駄目だ。」

「・・・飯？」

ゾロがサンジを見ると、気のせいかもしれないが、
ホッとしているようなそんな笑顔を向けられた。


俺の中ではもうこいつはサンジで、料理が得意で少し言葉が悪い。
それでも俺はこいつが気に入った。
人格データとかなんとかよく分からなかったが、
こいつがこいつでなくなるのは絶対に嫌だった。


そうして俺とサンジの二人暮らしが始まった―――


end