のび太のBIOHAZARD『ENDLESS FEAR』
前回の記述から数ヶ月が経った。実験に実験を重ね、遂に例のウィルスが実用化されることになった。例のウィルスの名は、『V(ヴァリアント)-ウィルス』になった。此処のすぐ傍にある、『Lv1研究資料室』の、"V(ヴァリアント)-ウィルス"関係の資料を読むと、『V(ヴァリアント)-ウィルス』は『t-ウィルス』とは全く違った物である事が再認識された。また『V(ヴァリアント)-ウィルス』には、電気信号を受けて、その性能を若干変える特性も持っており、汎用性にも富んでいる。
'03年12月18日
『V(ヴァリアント)-ウィルス』が実用化され、数々の『N.A.C.B.C.W.』も造られた事で、『t-ウィルス』を使用して造られた、旧式の生物兵器が制式配属『N.A.C.B.C.W.』から外された。それに伴って、旧式の生物兵器は廃棄処分扱いになった。しかし、参謀総長のドラ様によると、戦闘データを計測する為のものとすれば、まだまだ利用価値はあるとの事だった。
2004年4月10日
今年も、新入社員が入社してくる時期になった。自分には関係ないが、新入社員の相手をする人事部の連中はよくやってると思う。人道から外れた実験をしてる癖に他愛ない面接をやれる神経が俺には理解できない。しかし、此処に入社してきた新入社員も災難だな。特例を除けば、大体は被験体になるか、研究所の職員になるかのどちらかだからな。
'04年7月14日
新入社員が入社してから、大体3ヶ月が経っただろうか。いきなり緊急集会で、社員全員が集まった。すると、会長のスネ吉から恐るべき事が告げられた。どうやら、新入社員の一人に、『ナムオアダフモ機関』の実態がばれた可能性があるとの事だった。その新入社員の処置は参謀総長のドラ様の担当となり、他の社員には、隠蔽工作を怠らないよう注意するように言われた。今まで一度も、研究員と特殊部隊以外の新入社員にはばれた事が無かっただけに、今回の事態はかなり驚いた。その社員の名は、『牧野 燐』というらしい。
'04年7月17日
前回の緊急集会から数日が経った。例の新入社員の処置が決まったらしい。上層部の話では、『ススキヶ原研究所』の研究員にするらしい。まぁ被験体にされないだけましだろう。本人には、研修として研究所に送り込むと言っていたらしい。『ナムオアダフモ機関』に入社した新入社員は、少なくとも一年は、表向きの道徳的な事務作業を出来るというのに、たった3ヶ月で人外の研究員にさせられるなんて、こちらも同情してしまうな。
'04年7月23日
例の新入社員の『牧野 燐』が『ススキヶ原研究所』に送られてから3〜4日程経っただろうか。又もや、緊急集会で、新入社員を除く全社員が集められた。こんな短期間に連続して緊急集会を行うなんて事は初めてだ。一体今度は何事かと思ったら、例の新入社員の事だった。会長のスネ吉の話だと『牧野 燐』が『ナムオアダフモ機関』の武器庫から、重火器を主とした、銃火器を数挺くすねたらしい。『ナムオアダフモ機関』の実態に気づいただけでなく、『ススキヶ原研究所』に送られる直前に銃火器をくすねるなんて、『牧野 燐』は、かなりませた奴らしい。不本意ながら、少し会ってみたい気もしたが、『ススキヶ原研究所』に送られたなら、殆ど生きて帰れないだろうな。
'04年7月24日
どうやら、参謀総長のドラ様が『ススキヶ原研究所』で、旧式の生物兵器の戦闘データの算出実験をするらしい。戦闘データの算出実験なら他の所でも出来そうだが、どうやらススキヶ原は、ドラ様にとって、特別な思い入れがあるらしい。しかし、生物兵器を放つという事は、『牧野 燐』が生存出来る確率は絶望的だな。
'04年7月28日
『ススキヶ原研究所』からドラ様がこの『ナムオアダフモ機関本社』に戻ってきた。そして、10分もしない内に、緊急集会で、社員全員が集められた。ドラ様の話だと、ススキヶ原で旧式の生物兵器を放ち、戦闘データの算出実験を行った所、数人の少年少女が生き残り、近々、『ナムオアダフモ機関本社』に向かってくるそうだ。社員全員にその生き残った者達の顔写真と簡易的に算出した戦闘能力を記載したプリントが渡された。もしやと思ったが、やはり、例の『牧野 燐』の顔写真もあった。しかし、もっと驚いたのは、『野比 のび太』という小学四年生の少年だった。その少年は、"戦闘能力算出不能"とあり、
『一人で、『バイオゲラス』や3体の『フローズヴィニルト』、『ブラックタイガー』を撃破している。』
と書かれていたが、俄(にわか)には信じられなかった。更に、自動拳銃(ハンドガン)、散弾銃(ショットガン)、擲弾発射器(グレネードランチャー)、突撃銃(アサルトライフル)、短機関銃(サブマシンガン)、回転式大型拳銃(マグナムリボルバー)等、あらゆる銃火器をプロ級の腕前で使いこなし、弾丸が対象を外れた事がないと書かれてあったのはもっと信じられなかった。熟練のスナイパーでも、対象を外す事はそれなりにあるし、第一、のび太は殆ど自動拳銃(ハンドガン)を使っていたとあり、スナイパーライフルよりも命中率が低い筈であるのに、一発も外した事がないというのは、どうにも、誇張表現にしか見えない。しかし、他の少年少女も、卓越した能力を持っている事が明らかになった。
生物兵器を素手で始末する、『剛田 武』、会長のスネ吉の従兄弟であり、スネ吉のプログラミング技術を学び、ハッキングに長けた『骨川 スネ夫』、薬剤調合に長けあらゆる薬品を作り出す『緑川 聖奈』等、通常では考えられない能力を持った子供が4〜5人もいたのには驚かされた。
気になっていた『牧野 燐』の項を見てみると、『ロケットランチャー等の重火器を駆使し、ススキヶ原研究所内の、『N.A.C.B.C.W.』を殲滅していっていた。』
と記述されており、かなり派手な奴だと思ったが、一般人にしては、かなり逸材な人材であるな。
そして、集会の最後にドラ様から、
「奴らがこの『ナムオアダフモ機関本社』に到着した際に、おめてなしが出来るよう、準備をしておけ」
との言葉を賜った。まずは、事を全く知らぬ新入社員を戦闘員に改造し、更に、『特殊精鋭部隊』の全員に例のウィルスを投与。そして、『ナムオアダフモ機関本社』の至る所に各種の新型『N.A.C.B.C.W.』の配備。正直、ここまで徹底する必要があるのかと思ったが、取り敢えずは、ドラ様とスネ吉に従う事にした。
'04年7月30日
今日、『ナムオアダフモ機関』と裏で繋がり、ある契約を結んでいる、ホテル、病院、ビジネスビルに、『近々、生物兵器を放つ。』という旨を話した。当然何処も反発したが、『協力しなければ、契約を破棄する。』との事を伝えた結果、渋々了承した。どちらにせよ、この3つの施設はもう終わりだろう。
'04年8月2日
遂に、市街地に、旧式の『N.A.C.B.C.W.』が投入された。奴らを侵入させないようにする為とはいえ、少々やり過ぎなような気がする。その旨をドラ様に伝えた所、『他の奴らはともかく、のび太は、この程度の障害等、苦にもしない。』
作品名:のび太のBIOHAZARD『ENDLESS FEAR』 作家名:MONDOERA