のび太のBIOHAZARD『ENDLESS FEAR』
しかし、残念ながら何も出てこなかった。その後、僕たちは、元来た道を戻っていった。宿直室の扉を通り、L字型の廊下を進み、さっき通ってきた扉を開けた。まだ調べていないのはここから見て通路を右側に進んだ所だ。僕たちは、銃を構えながら、慎重に進んでいった。数メートル程進むと、通路が突き当り、道が左右に分かれていた。右側の通路には、左側の壁に扉が一つだけあり、左側の通路には、右側に二つの扉が並んでいた。位置関係から推測すると、左側の通路の奥の扉は、A棟とB棟を繋ぐ扉だろう。という事は、此処から見える扉の内、調べていないのは二つという事になる。
「扉が反対方向にそれぞれありますね。左側の通路の奥の扉はさっき入ってきた扉だとして、調べてない扉は二つですね」
僕がそう言うと、巌さんは言う。
「そうだな。二手に分かれたいところだが、さっきの真理奈の事もある。ここは固まって行動するか。俺と織恵で廊下の警戒を行うから、のび太と真理奈が内部の探索をしてくれ」
巌さんがそう言うと、全員はそれに肯定した。僕達は最初に左側の通路にある扉から調べていく事にした。さっきの打ち合わせの通り、僕と真理奈ちゃんが扉の前にスタンバイし、突入の準備をした。巌さんと織恵さんは、それぞれ左右を見張った。僕はゆっくりとその扉を開けようとした。しかし、その扉には電子ロックが掛かっているようだった。ふと、扉をよく見てみると、『サーバ室』と書かれたプレートがあり、そのすぐ下に、『このサーバ室はソフトウェア管理課で管理されています。入室の際は、ソフトウェア管理課まで来て下さい。入室に際し、適切な理由と認められた場合、入室を許可します。』と書かれていた。
「……この部屋はサーバ室らしいけど、電子ロックが掛かっていて入れない。ソフトウェア管理課って所で管理してるらしいけど」
僕はその扉に書かれていた注意書きを見ながらそう言った。すると、織恵さんが言う。
「ソフトウェア管理課なら、下の階にあったわ。場所なら解るけどどうしましょう?」
織恵さんが巌さんにそう言った。すると、巌さんは答える。
「いや、今はやめておこう。今はこの階の探索と安全確認が先決だ。此処を調べるのは後でもいい。もう一つの扉を調べるぞ」
僕達は、サーバ室を後にし、反対側の扉を調べた。反対側の扉に着くと、まず扉のプレートが目に入った。そのプレートにはこう書かれていた。
『休憩室』
それを見た瞬間、今まで張りつめていた緊張感が一気に緩んだような気がした。ここら辺は特にB.C.W.の襲撃も受けてないし、この分だったら、休憩室も元のまま残っている可能性が高い。僕は、緩んだ緊張を戻し、
慎重に扉を開けた。
扉を開けた先には、普通の休憩室だった。テーブルやソファー、簡易ベッドに冷蔵庫等があった。暫く部屋を見回したが、特におかしい所は無かった。
「…………どうやら、此処は安全みたいだな」
僕がそう言うと、真理奈ちゃんは言う。
「そうだね。普通の部屋を見たのは久しぶりかな」
真理奈ちゃんがそう言うと、僕は、巌さんと織恵さんを部屋に呼んだ。
「……この部屋の広さは都合がいいな。俺達9人全員が入っても大丈夫そうだ。此処は、これからの拠点にするか」
巌さんがそう言うと、僕は言う。
「それじゃあ、皆を呼んで来ましょうか?」
「ああ、頼む。そうだ、真理奈も連れていけ。あいつらも安心するだろうからな」
巌さんがそう言うと、僕は頷き、真理奈ちゃんを連れて、集合地点に向かった。集合地点には、怜さんと聖奈さんと燐さんと迅さんがいた。
「あ、のび太君! ……真理奈ちゃんは無事なのね?」
僕と一緒に来た真理奈ちゃんを見た。怜さんがそう言った。
「うん。でも、スネ夫達は?」
僕がそう尋ねると、迅さんは答えた。
「スネ夫君は、向こうにあるコンピュータを使って、暗号化された情報の複号化をしてますよ」
迅さんのその言葉を聴いた僕は、迅さんに訊いた。
「……じゃあ、スネ夫達が居る場所に行くには、此処からどう行けば、いいんですか?」
僕がそう尋ねると、迅さんは答えた。
「この通路を道なりに通り、突き当たりに扉が二つあるので、右側の扉を通り、後はその先に進めば、スネ夫君と武君がいます」
「解りました。じゃあ、巌さん達が居る場所まで案内しますね」
僕がそう言うと、燐さんが言う。
「道さえ教えてくれたら、案内しなくても大丈夫だと思うけど。のび太はこれからスネ夫達の所に行くんだろ? 無駄な時間を掛けなくてすむじゃないか」
僕は、燐さんのその言葉を聴いて、燐さんの提案に乗る事にした。
「ええ、そっちの方がいいですね。――巌さん達は、『休憩室』にいます。休憩室に行くには、B棟への扉を通り、すぐ左側の道を直進します。すると、左側に、『休憩室』と書かれた扉があるので、その中に巌さん達がいます」
僕がそう言うと、僕と真理奈ちゃんを除く4人は休憩室に行こうとした。僕はその中の1人、聖奈さんを呼び止めた。
「聖奈さん。ちょっと行っておきたい事があるんだけど。休憩室に着いたら、巌さんに、『皆に大事な話をしておいてくれ、スネ夫とジャイアンには、僕から話す。』って伝えてくれないか?」
僕は、聖奈さん以外の誰にも聞かれないように、特に真理奈ちゃんには聞こえないようにそう言った。
「? 解りましたけれど、どうしてそんな事を? それに大事な話って?」
聖奈さんはそう訊いてきた。僕はただ一言、
「巌さんに伝えれば解るよ」
とだけ言った。聖奈さんは今一納得出来ないようだったが、なんとか了承してくれた。その後すぐに、怜さんと燐さんと迅さんと聖奈さんは、休憩室に向かった。僕と、真理奈ちゃんは、さっき迅さんに教えてもらった道順通り進んで行った。迅さんが言っていた通りに進むと、やがてスネ夫とジャイアンを見つけた。
「ジャイアン。此処で何してるんだ?」
部屋に入った瞬間に僕がそう言うと、ジャイアンは答えた。
「お、のび太か。今、スネ夫が暗号の解読してるんだ。ただスネ夫一人だけじゃ心配だからな」
ジャイアンはそう言うと、真理奈ちゃんに気付いたのか驚いた声を挙げた。
「! 真理奈ちゃん見つかったのか!」
ジャイアンがそう叫んだあと、間髪入れずに言う。
「ああ。B棟の宿直室にいたよ」
僕がそう言うと、スネ夫が言う。
「でも大事にならなくて良かったね。殺されてるか、実験台にされてるかどっちかだと思ったから」
スネ夫がそう言うと、真理奈ちゃんは言い返す。
「そうか、よくよく考えてみると、そうなってたかもしれないね」
真理奈ちゃんは緊張感が全くない様な態度でそう言った。真理奈ちゃんは相変わらずといった感じで、この状況を理解しているのか疑問になる。……まぁ確かに暗くされるよりは士気の低下は防げるけど。
――多分、この態度も真理奈ちゃんなりの配慮だろう。真理奈ちゃんであっても不安なんだろう。
それから暫く経って、スネ夫が立ち上がった。
「よし、複号が終わった」
スネ夫がそう言うと、ジャイアンがスネ夫に尋ねる。
「結局暗号化されてたデータって何だったんだ?」
作品名:のび太のBIOHAZARD『ENDLESS FEAR』 作家名:MONDOERA