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はろ☆どき
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novelistID. 27279
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桜舞う、夢に舞う

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気づいたら建物から閉め出される時間になっていて、慌ててやりかけの仕事を引き出しにぶち込んで出てきてしまった。
外はこの季節だというのに夜遅いせいもあってしんと冷えている。
体は疲れているけどぼんやり歩いていたくてわざと遠回りの道程を選ぶ。

途中のリカーショップでつまみと軽い酒を買った。
桜の並木道を歩きながら林檎の香りのする発泡酒をぐいと一口流し込むと、軽い飲み口だが空きっ腹の胃にはちょっと沁みた。
少しぼうとした頭で昨日のことを思い返す。

久々に彼と顔を合わせた。
ずっと避けていたのに、仕事でやむを得ず一日共に過ごすことになってしまって。
どうなるかと思ったけどとても普通だった。
彼は自分に普通に挨拶して普通に話をして、そして普通に笑いかけてきた。とても自然だった。
自分も普通に話すことができて・・・だからもう平気なんだと思ったんだけど。

誰にでもと同じように話しかける笑いかけるその顔を思い出したら、ふいに泣きそうに途方に暮れて立ち止まってしまった。
ほうと白い息を吐きながら上を見上げると、少し欠けた月と重なりあう枝のシルエット。
春咲きのその枝にはまだつぼみが付いてもいない。

やっぱり少し酔ったみたいだ。
帰ったらつまみでなく軽くご飯を食べて風呂に入ろう。シャワーで済ませずバスタブに湯を張ってゆったり体を温めて、そして暖かくして寝よう。自然に目が覚めるまで寝ていよう。明日は久々の休日だ。
頭も体もきっと休息が必要なんだろう。
そう考えながら家路へと足を進めた。


春を呼ぶ薄紅色の花の訪れは未だ遠い。


作品名:桜舞う、夢に舞う 作家名:はろ☆どき