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ケント@特ルリ
ケント@特ルリ
novelistID. 37469
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特にオチのないルリカゼお嬢様短編0

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……いや、正確には、結ばれたと勘違いした…か。
後から聞いたら、ただのケントの片思いで、おまけに相手は恋人持ちの男じゃそうじゃねえか。…やれやれ、世の中怖いねえ、好いた惚れたはわからんわ。
……こほん、話を戻そう。
ちょうどその頃、俺は荒れに荒れていた。徒党を組んで、略奪の限りを尽くす山賊まがいのブーバーンだった。信じられるか、一時はドレーンに勘当されていたんだぜ?
……最も、後から聞けば、落ち着いたら復縁するつもりだったらしいが…そ、そんな事はどうでもいい!
…とにかくだ。そんな俺が、大好きな妹のために、何もしてやらないわけないだろ?
…その方法が、平穏に終わるわけも、ないだろ?
 「なら、力づくで奪いとりゃいい。ドレーン家の力だ、金銭さえあればどんな略奪愛だって可能だろ?」
「……ゆるさねえぞ……今まで築き上げてきたルリカゼの想いを、他でもないルリカゼが入れなかったチームに踏みにじられて、たまるか!」
…で、これが後の人間が良く言う「Lovers解散危機事件」の発端だ。
瀕死になると結晶化して生き延びるグレイシアの習性を知り尽くしていた俺は、仲間と共にスノアを3つの結晶に砕いた。
そして、そのうちの一つは……俺が持っておくことに、したのさ。
ルリカゼに、憎い相手の仇は討ったと。これでお前の道が開けると、そう言う為にな。
…スノアのヤローにとっちゃ、いい迷惑だっただろうなあ…あの世界に行く事も少なくなったが、いつか遭ったらもう一度謝り…
…とにかくだ。そうして、不気味な緑色に輝く結晶を見せたとき……何を考えたか、ルリカゼは結晶を奪って逃げたぜ…
……あまつさえ、それを目撃され、お尋ね者にまでされてしまったのだ。
……ドレーン家の長女と長男も、地に落ちたとまで、当時は言われたぜ…
……奪って逃げた理由は…そうだな、やはりルリカゼに直接聞いてくれ。

お兄様から邪魔者は消したと聞いたとき……私が真っ先に感じたのは、恐怖でした……
……ケントさんの、大事な方がもうこの世にいられないかもしれない、と言う恐怖。そして、そんな重大な事態を引き起こしてしまったお兄様に対する恐怖。
ですが、
私は、その後に……ほんの少しだけ、喜びを感じました。感じて……しまったのです。
…これで、
これで、順番すら回ってこなかった私にも、チャンスが訪れる。
私は、絶対的に不利であった。
ならば、これは許されるのではないか。許されても良いのではないか。
こんな、どうしようもない世界なのだから。
そう…
…そう思う私が、何処までも嫌でした。
ならば、私はこの欠片と共に、永遠にこの世界から消えてなくなりましょう。
思い叶わず砕け散るなら、せめてもの道連れを。
……そう思って、死に場所として私が選んだのが……異世界の峡谷「あかつきのたに」でした。

……さて、ありがとな、ルリカゼ。 …続きだ。
あかつきのたにに逃げたルリカゼを追ったのは、他でもないケント自身…と、その仲間のバクフーンとアブソルだった。
…運命って言うのは、皮肉屋で非情な奴だぜ。
チームの危機に敢然と立ち向かったのが、他ならないルリカゼの想い人自身だとはな…
……当然、ルリカゼは誤解した。恋人の為に、私を倒して欠片を取り返されるのではないかと。
……絶望し、追い詰められたたあいつが選んだのは、「しんかのひやく」を飲むことだった。
―ああ、ありがとな、アーシファ。 …これが、その薬だ。軍人時代からドレーン当主しか調合法を知らない、一時的、かつ人工的な進化…それも、タイプが全く変わってしまうなど本来の進化とは違う大規模な進化を引き起こす恐ろしい薬だ。たった数滴ですら、自分の身に何が起こるかわかったもんじゃない。…本来は、戦場で味方をすべて撤退させた後薙ぎ払うのに使ったんだと。
……この薬を飲み干したルリカゼは、巨大な翠の龍に変化したと聞く。
とても美しく、とても怖気を誘う見た目だったらしい。見てみたい気も、見てみたくない気もするな。
……とにかく。
その龍に、ケントとそのかつての仲間は立ち向かった。
……そのままじゃ殺されていたかもしれないな、どちらかが。
……だがな、そのとき同行していたアブソルが、こう叫んだんだと。
「…ルリカゼさん! …ケントさんは、今でも…今でも、ケントさんを、大好きですよ!!」
…ケント本人が叫ばないところが、いかにも意気地なしのあいつらしいぜ。
それを聞いたルリカゼは…本当はこんなことはありえないのだろうが…感情を乱されて薬の効果が解けた、らしいぜ。
…やっぱり、お前が語ったほうがいいか?ルリカゼ?


「私は、この欠片を……どうしたかったのでしょうか。」
輝く宝石を山小屋の明かりに照らすと、赤と緑の混ざった暗い色に輝く。
「……この欠片を、砕いてしまうのは容易な事ですし……私も、そうしようと思いました」
「……!」
ぐっ、と宝石に力が込められ、3匹のポケモンはとっさに身構える。
「ですが……そうは、しませんでした。そうではなく……この宝石と共に、何処か遠い世界に消えてしまいたかったのかも、知れません。」
「……ヤナッキーさん……」
構えを解いたキノガッサが、遠慮がちにそう声を掛ける。
「ヤナッキーさんは……自分が、望まぬ事件をを引き起こしてしまった自分が……」
「……ええ。こんな事態を、こんな状況を引き起こしてしまったのは、全て私の我侭のせいなんです。」
「(……何故、私じゃないの。
なんで。
そんなのって、ないじゃない。
既に、結果が決まっているなんて。
シナリオの線路の上を、無力に歩くしかないなんて。
……なんで。なんで。ナゼ。何故。ナゼナゼナゼ……!
……辛いよ、苦しいよ、憎いよ。
運命が、そして……こんな私が。)」
「……」
「………私のわがままを、私の戯言を…最後まで聞いてくださり、ありがとうございます、皆様……」
目の前で、全てを語り終わった私は、一言そう言うと、
「……そして、これはお返しします。こんな私でごめんなさい……」
握っていた緑の宝石を、戸惑うキノガッサに手渡し、
「……そして、……さようなら、ケントさん。」
「……!はやまるなっ!!」
そして、アブソルがそう静止するのも間に合わないほど身軽な動きで、山小屋の窓を開け、そこから身を投げる。
いや……
「……ヤナッキーさん!」
……投げようと、した。
それを救ったのは、
「……?!」
「あはは、よ、良かった……間一髪、ですね…」
……非力な伸びる腕で、彼女の尻尾をしっかりと掴む……キノガッサ。
……キノガッサの、ケントさん。
……私の、未来の恋人。


……それで、だ。
欠片は探検隊の手に還り、ルリカゼの失恋が勘違いであった事(まあ最も、ケントには別の恋人がいたんだが…これはこの際よしとしよう)ケントの機転で、俺たちは罪を問われずに済んだ事。
それら全てが分かった後、俺達は無気力と絶望に囚われるかに思えたが…そうは、ならなかった。
「……私、また…また、頑張れますわ。お兄様と一緒に、家族皆と一緒に…!!」
「……俺も、いっちょやる気を出して、みようかな。お尋ね者指定も解除されたし…な!」