魔法少女おりこ★マギカR
…相手が何を狙っているのかが判らない以上、警戒するに越したことはない…
さいわい、ほむらの魔法少女スタイルは、見滝原に来る前に通っていたミッション系の私立学園の制服を模しただけ(という俺様設定)であり、それほどコスプレじみてはいない。よって、例え、相手が《ただの普通の人》だったとしても、奇異の目で見られることはないはずだ。
…こういう時、以前の能力が使えたら、苦労しないのだけれどね…
再編した世界では、時間操作の魔法が使えなくなっていた。まどかが存在しない世界で、『まどかとの出会いをやり直したい』という願いは、意味を持たない。ゆえに、彼女の能力は、時間操作の魔法ではなくなってしまった。
かわりに、この世界では、弓と光の矢を出現させ、それを使って戦えるようになっていた。おそらく、まどかから受け継がれた力なのだろう。
とにかく、かつては、武器の調達場所として重宝していた、ヤ『ピー』の事務所や、自衛隊や在日米軍基地であっても、時間を止めることで、易々と侵入できた。
だが、今は、そういうわけにはいかなかった。
ほむらは、足音を殺し、身を潜めるように姿勢を低くした状態で、奥に進んでいく。
…それにしても…
思わず、進んでいる門から屋敷への通路や、庭を見まわしてしまった。
通路の両脇や、庭の周囲を覆うように埋め尽くされた、見事なまでに咲き乱れた薔薇の花。屋敷を囲う壁の外側の荒れ具合からは、想像もつかないくらい、キレイに手入れがなされている。まるで、俗世間から隔絶された、夢の世界のようだった。
世間から、非難の目で見られ、酷い仕打ちを受けても、この薔薇の花の手入れだけは、欠かしていないのだろう。
ほむらは、いよいよ、織莉子という人物が理解できなくなっていた。
玄関まで辿り着き、ドアノブに手をかける。鍵は…かかっていなかった。
迷わず、玄関をくぐり、屋敷の中に足を踏み入れた。
全ての窓にカーテンが掛けられており、まだ夕暮れ前という時間でありながら、屋敷の中は、真っ暗だった。人が帰ってきているとは、到底、思えなかった。
「どういうことかしら?」
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 作家名:PN悠祐希