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PN悠祐希
PN悠祐希
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魔法少女おりこ★マギカR

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「そう…ワルプルギスの夜を迎えるまでに、私達がやってきことだったのよ…」

       * *

 予知能力で、魔女との戦いで命を落としてしまうかもしれない子や、魔女化しそうな子を、事前に見つけることはできると思った。
 だけど、魔女化しそうな子に関しては、どうやったら助けられるか…なにをすれば、世界の再編まで魔女化をさせずにいさせられるのか…その方法が、自分では思いつかなかった。
 説得?…心が絶望しかけている者に、赤の他人の言葉や厚意は、おそらく届きはしない。何か企んでいると勘ぐられ、反発されてしまうのがオチだ。

 そう考えていた時、私の脳裏に、ある魔法少女達の行動が浮かんできた。

 彼女達は、見滝原ではない別の街で、《プレイアデス聖団》という魔法少女チームを結成して行動していた。
 プレイアデス聖団は、基本的には、魔法少女の本分である、魔女を倒すことを目的としたチームだった。
 しかし、その裏で…同じ魔法少女を襲撃していた。
…どうして?…
…なんで、そんなことを?…
 よく見ると、彼女達は、倒した魔法少女から、あるモノを奪っていた。
 それは、ソウルジェム…魔法少女の命そのもの…
 彼女達は、無傷のまま手に入れたソウルジェムを保存し、慎重に管理していた。
 そう、彼女達の真の目的は、襲った魔法少女を助けることにあった。
 ソウルジェムの状態で保存されれば、魔力を使用することもなく、負の感情に囚われ絶望することもなくなる。結果として、ソウルジェムを濁らせることを防ぎ、魔女化を抑えられた状態で生き続けられるということだ。
 彼女達は、いつか、魔法少女が元の人間の状態に戻す方法が見つかると信じ、その為に、ソウルジェムを無傷で回収するべく、同じ魔法少女と戦っていたのだ。
…とにかく、この方法は、使えるわね…
 ちなみに、プレイアデス星団は、ソウルジェムだけでなく、実は身体も回収し保管していた。その為、本来なら、ソウルジェムを取り出しただけでは、身体との繋がりが断たれず、そのままでは、ソウルジェムが濁りを貯め込むのを止めることはできないはずだった。それを、特殊な魔法で完全に繋がりを遮断することで、現状を維持することを可能としていた。
 だが、私には、そんな魔法は使えない。ソウルジェムと身体の繋がりを完全に断つには、身体を完全に消し去るしかない…そう思った。
 とはいえ、本来なら、いかに魔法少女の身体が入れ物にすぎないといっても、完全に失われてしまえば、さすがに修復は不可能だろう。
 にも関わらず、不思議と、この方法に疑問を抱かなかった。予知とまではいかなかったが、その能力に準じた勘が、『それで大丈夫』だと告げていた。
 私は、すでに魔女化してしまった子は、再編時の救いに任せようと割り切り…
魔女を倒すという使命を果たしながら、魔女化しそうな子、魔女との戦いで命を落としそうな子を助ける…
キュゥべぇと契約を交わした、その日のうちに、そんな決意を固めた。


 翌日の朝…
 私は、登校中の見滝原中学の生徒の様子を、密かに覗っていた。
 世界の再編などという、神にも等しい行いをすることになる子が、どんな人物なのかを、知りたくなったのだ。
 学校は…サボった。というより、お父様の不祥事が世間に知られてから、すでに長いこと、学校には行っていなかった。それでも、一応、時間帯からして、不審にならないように制服を着て行動するようにしていたが…もう、あんな学校に通うつもりはなかった。
 それはさておき…
 その子が、見滝原中学の制服を着ていたのを思い出し、この時間に通学路を張っていれば、見つけられると考えてやってきたのだ。
 すると、すぐ傍を、女の子の三人組が通り過ぎて行った。その一人…『まどか』と呼ばれていた子が、まさに、私の予知で、世界を再編した子と重なった。
…そうか…こんな、平凡そうな子が…
 それが、彼女を見た、最初の印象だった。
 だけど…それほど長い時間ではなかったとはいえ、しばらく彼女を見ているうちに、だんだん彼女に魅かれていくのが解った。
 本当に明るくて、優しそうな笑顔を振りまいて…
 彼女だったら、ただの私を見てくれるかもしれない…
 お友達に…なれたらいいな…
 でも、今は、それはできない。再編前の世界の彼女に、私の記憶はない。下手に干渉してしまえば、未来が変わってしまうかもしれない。より良い方ならばともかく、もしも悪い方に変わってしまったら…できるだけ多くの子達に救いをもたらす為に、それは許されないこと。
 大丈夫…今は、まだ現れていないようだけど、おそらく、あの時、必死に戦っていた子…『ほむらちゃん』と呼ばれていた彼女が、近いうちに必ずやってきて、まどかを様々な事から守り、あの場面に導いてくれる…
 まだ、その方法は思いついていないけど…けど、あなたも、新しい世界で生きていられるよう頑張るから…
 だから、まどか…その時に、また逢いましょうね…
 私は、見滝原中学の生徒の流れに逆らうようにして、歩き出した。


 その後、一応、魔女の気配を探りながら、街を歩いて回った。
 予知能力の使用にも、当然、魔力は消費する。
 ゆえに、これから魔女になる子は仕方ないにしても、すでに誕生してしまっている魔女は、ソウルジェムを使った一般的な方法で見つけるのが良いと思った。

 そうこうしているうちに…
「おなかが…すいたわ…」
 思わず、そんな声が出てしまった。恥ずかしい…
 携帯電話で時間を確認すると、すでに、お昼すぎ。学校に行っていたら、午後の授業が始まっている頃だ。
 それ以前に、キュゥべぇと契約する前の数日間、家に引きこもって、ほとんど動かないでいたばかりか、食事も満足にとっていなかったことを思い出した。
 それで、いきなり街を歩き回ったりして…それは、思わず口にしてしまう程に、おなかがすいてしまっても、仕方がないことだろう。
 とりあえず、もうひと歩きするにしても、家に帰るにしても、先に食事を済ませてしまった方が良さそうだと考え、すぐ傍にあったファーストフードのお店に、立ち寄ることにした。
 お店に入ると、レジの周りが、にわかに騒がしかった。注文を待っている客のものと思われる文句や、店員の困ったような…むしろイライラしたような感じの声が、聞こえてくる。いずれも、言い方に差こそあれ、『早くどけ』というような意味の言葉を口にしていた。
 見ると、同い年くらいの黒いショートヘアーの女の子が、レジの前でしゃがみ込んでいた。どうやら、お財布の中身を、ぶちまけてしまったらしい。しかも、それ等を拾う動作が、またユックリしていた。
 確かに、待たされる身になれば、文句も言いたくなるかもしれないけど…
 気がつくと、私は、その子の傍まで歩み寄り、一緒に、お財布の中身を拾ってあげていた。非難の目を浴びせられ続ける彼女を、黙って見ていられなかった。
 そう…お父様のことで、世間から非難の目を向けられるようになった、そんな私自身を見ているようで、つらかった…
 私は、すぐに落ちていた物を全て拾い上げ、彼女を促しつつ、他の人の邪魔にならない場所に移動した。そこで、拾った物を手渡した。