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PN悠祐希
PN悠祐希
novelistID. 37045
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魔法少女おりこ★マギカR

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 その日の夜…
 魔法少女としての初陣…
 私は、昼間に当たりをつけていた場所に向かった。
 形成されていた、魔女の結界…
 その中では、そこに巣くっていた魔女と、一人の魔法少女が、すでに戦いを始めていた。
 彼女は、それなりに強く、魔女を、あと一歩のところまで追い詰めた。もっとも、彼女にも、余裕は残されていないようで、汗が滝のように流れ、肩で息をし、視界も霞んでいるようだった。それでも、最後の一撃を放とうと、意識を集中させる…
 しかし、次の瞬間…その魔女に、とどめを刺したのは、私だった。
 いきなり、粉々に砕け散る魔女を、彼女は、驚きのまなざしで見つめていた。
 その彼女の前に、私は、姿を現した。
「あなたね…あたしの獲物を、横取りしたのは?」
 彼女は、うつろな視線で、私を睨みつけてきた。
 だけど、私は、何も応えず、自分の周囲に、魔法で作り出した球体を、いくつか発生させた。それを、問答無用で、目の前の彼女に向かって放つ…
 それ等が、彼女の、腕や脚に、次々と着弾し爆発した。
 それが、私の攻撃。魔法で発生させた球体をぶつける、ただそれだけ。
 もっとも、その球体に、様々な特性を付加させることができた。爆破、炸裂、焼夷、閃光、煙幕、等々…
 今回は、爆破の性質を持った球のみを使っていた。
 そう…私の初陣の相手は、先に倒した魔女などではなく、この魔法少女だった。
 こうなることが…この魔法少女が、この時間に、ここに現れるのが予知できていたから、私は、昼間に、魔女の存在に気が付いていながら、あえて手を出さずにいた。
 魔女に関しては、私が介入するまでもなく、彼女が、ほとんど倒していた。あとは、ほんのわずかな力の攻撃で、充分に、とどめを刺せる状態だった。
 しかし、その最後の攻撃を繰り出した瞬間…それが、どんなにわずかな魔力の使用でも、彼女は、完全に力尽き、倒した魔女と入れ代るようにして、そのまま魔女となってしまう…
 だから、私が、とどめを刺すことにした。
 もちろん、その魔女のグリーフシードを使えば、彼女のソウルジェムを、一時的には浄化することはできるだろう。しかし、ここまで穢れを溜め込んでしまうような状態では、ここをしのいでも、もう先は長くない。
 それに、私にも、当然、グリーフシードは必要なのだ。世界が再編される時まで、魔法少女でい続ける為に…
 彼女は、私の攻撃で、右腕と両脚を負傷し、仰向けに倒れていた。恐怖に歪んだ表情で、涙を流している。
「どうして…なんで、こんなこと…」
 震えた声で、そう問いかけてくる。
 だが、答える必要はない。その意味がないからだ。
 再編された世界では、この記憶も、このような出来事があったことさえ、なかったことになるはずだから…
 私は、何も応えないまま、再び、魔法球を発生させた。
「グリーフシードが欲しいなら、持っていけばいいわ。だから、命だけは…」
 彼女は、必死に命乞いをしてきた。
 うん…もちろん、そのつもり…
 命は…助けてあげる…
 次の瞬間…彼女の身体は、左腕を残し、完全に爆散して消えていた。残った左腕の手首には、腕輪が装着されていた。それに、宝石が備えられている。これが、彼女のソウルジェムだった。
 彼女のソウルジェムは、完全に黒く濁りきっていた。魔女化、一歩手前…いや、半歩手前といった状態だ。
 私は、それを回収し、次いで、先に倒していた魔女のグリーフシードを拾った。
 元々は、奇跡を信じて魔法少女となり、人々を守り、希望を振りまく存在だった…
 それが、絶望し、ただの怪物と化し、今度は人々を呪う存在になる…
 私は、初めて、直接対することになった魔女と魔法少女…そのグリーフシードとソウルジェムを、同時に見つめながら、そんなことを考え、悲しい気分になった。
 そう…だからこそ、こんな悲しいモノを、存在させてはいけない…
 頬を、涙が伝っていた…


 初陣から、一週間ほどたった、ある日…
 私は、自分が救うべき二人目の魔法少女を、予知した。
 しかし、その子は、残念ながら、間に合わなかった。
 私が、その子の所に到着した時は、すでに砕けたソウルジェムからグリーフシードが誕生しており、魔女化が始まってしまっていた。
 未来を変えてあげることが、できなかった。
 すぐ傍には、女の子がいて、まったく動く様子のない、髪型が少し違うだけの同じ顔を持った子の体を抱きしめながら、必死に名前を呼んでいた。おそらく、二人は、双子の姉妹…
 そうか…魔女の卵であるグリーフシードを生むのは、魔法少女の本体ともいうべきソウルジェム…
 つまり、回収さえできれば、肉体は、魔女化した後でも、この世に残せるということ…
 そんなことを冷静に考えてしまえるようになった私の思考を、少し恨めしく思った。だが、それは、戦いを続けていくうえでは、必要な変化だ。
「離れていなさい」
 私は、変身しながら、魔女と女の子の間に、割って入るようにして駆け込んだ。
 だが、女の子は、その場を離れようとはしなかった。解っているのだ…自分が抱きかかえている子の魂は、目の前に現れた怪物なんだと。
「気の毒だけど、このなってしまっては、もう元には戻らないわ。そればかりか、このままでは、アレの作り出す結界に囚われて、あなたも助からなくなってしまう」
 私は、そう呼びかけた。
 魔女の結界に囚われ、殺されてしまった者は、この世で死体が発見されることはない。それは、本人よりも、むしろ家族や周りの人間にとって、残酷なことだ。永遠に見つかることのない、その人のことを、いつまでも探し続けることになるからだ。
 それでも、女の子は、逃げない。もしかしたら、それでも良いと思っているのかもしれない。
 そのうち、魔女化は完全なモノとなり、私達は、結界に囚われてしまった。
 身内の目の前で倒してしまうのは、少し躊躇われたが、このままでは共倒れになる…
 先手必勝…と考えたが、すぐに駄目だと判断した。
 この時の私の攻撃は、基本的には爆発系。ソレを使うには、魔女と女の子との距離が、あまりにも近すぎた。どんなに威力を抑えても、確実に巻き込んでしまう。
 そうして、私が、攻撃を出し渋っている隙に、ついに魔女が攻撃を開始した。
「…!」
 私は、咄嗟に、なんの特性もない魔力球をいくつか作り出し、自分の前に展開した。防壁がわりにする為だ。
 だが、そんなモノで、魔女の攻撃を防げるはずもなく、全て簡単に弾かれてしまった。
 攻撃は、そのまま、私を直撃した。
「きゃああああああああああああああああああああ…」
 私は、叫び声をあげながら、大きくフッ跳ばされ、そのまま地面に叩きつけられた。それでも、勢いは止まらず、何度か地面を跳ねた後、壁のような場所に背中から激突して、ようやく止まった。
…痛い…死ぬほど、痛い…
 あまりの苦痛に、涙がこぼれた。体が動かない。
 それでも、なんとか魔女の方に、視線を向ける…
 すると、涙に濡れた視界に、今まさに、女の子に襲いかかろうとする魔女の姿が、かろうじて映った…
「や、やめなさい! あなたは、自分の姉妹を、手にかけるつもりなの?」