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PN悠祐希
PN悠祐希
novelistID. 37045
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魔法少女おりこ★マギカR

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 私は、声の限りに叫んだ。もしかしたら、ほんの少しくらい、魔女になる前の記憶が残っているかもしれない。そんな淡い期待を抱いていた。
 しかし…無情にも、魔女は止まらない…
「やめてえええぇぇぇっ!」

…ザシュッ!…

 次の瞬間、激しい斬撃音が、辺りに響き渡った。
…あ…私は、大層なことを考えていながら、魔法少女どころか、一般人すら、守ることができなかった…
 そして、次に殺されるのは…私…
 結局、誰も助けられず、何もできないまま、死んでいく…そんな無力な自分が悔しくて、いっそう涙が溢れた。
 ところが、魔女が、いっこうに動こうとしない。
「…?」
 よく見ると、攻撃をしようと振り上げたはずの、腕だか触手だかという部位が、魔女本体から斬りとばされ、少し離れた地面に転がっていた。
 女の子も、無事だった。
「え?…え?…」
 何が起こったのか、判らなかった。
 すると、魔女の姿も、まるで陽炎のように揺らめいたかと思うと、次の瞬間、完全に消えてしまっていた。

 そのすぐ後、何者かが、魔女がいた所に降りてきた。黒いショートヘアーの、おそらく女の子。指先まで覆うように伸びたジャケットの両手の袖からは、片側三枚ずつ、鷹の爪を思わせる形状の長い刃が生えていた。間違いなく、魔法少女。
どうやら、彼女が、魔女を撃退してくれたようだ。
「ちぇ…倒しそこねたか…力を使いこなせていれば、あんなトロイ奴、逃がしはしなかったんだけどな〜」
 彼女は、そんなことを言いながら、私の方に、身体をを振り向かせた。おかげで、その顔が、ハッキリと見えるようになった。右目を覆うような眼帯をしている。
 だが、その顔には、見憶えがあった。例え、眼帯で顔の半分近くを隠してはいても、判るものは判るのだ。
「あなたは…あの時の…」
 私は、思わず、そう声をかけてしまった。
 そう、その魔法少女は、一週間ほど前に、ファーストフード店で出逢った、あの彼女だった。
 すると、彼女も、驚いたような表情を見せ…
「君は…お金を一緒に拾ってくれた人?」
 次の瞬間には、パッと笑顔になり、生やしていた手の刃を消すと、壁に激突したままの…その壁を背もたれにして上半身だけ起こしているような、そんな状態の私の両手を、唐突に握りしめ…
「それにしても、私のこと、憶えていてくれたんだ〜! いやぁ感激だよっ!」
 ブンブンと上下に振り、喜びをあらわにした。
「あ…あの…」
…なんか…最初に逢った時の感じと、違うな…
 と、そんなことを考えていた私に、彼女は、自己紹介を始めた…
「私は、呉・キリカ。キリカって呼んで欲しいな。でも、君と、こんな形で再会できるなんて思ってなかったから、ちょっとビックリしたかな。私、あの時、親切にしてくれた君に、ちゃんとお礼を言って、それから、ユックリと話しをしてみたいって、ずっと思ってたんだ。そうしたら…まさか、君も魔法少女だったなんてね〜。とにかく、これから、よろしくね」
「…私は、美国・織莉子…よろしく…」
 彼女…キリカの勢いにおされるがままに、私も自己紹介をした。
 すると、キリカは、私が、腰を落としたままの姿勢であることを察したのか…
「あ、ごめん…大丈夫? 立てるかな?」
 心配そうに、そう訊いてきた。
「え、ええ…もう、大丈夫よ…手、少し引っ張ってもらっていいかしら?…」
 私は、そう答えると、握られたままのキリカの手を支えに、立ち上がった。
 なるほど…確かに、体の回復が早い。
 肉体はただのハードで、どんなに損傷しても、痛みもある程度は誤魔化せる上に、魔法で元に戻せるというのは、本当のようだ。
 そうでなければ、最初の攻撃を受けた時に、おそらく痛みで失神していたか…あるいは、あの衝撃では、普通に致死レベルのダメージを受けていた可能性もある。
 今さらながら、普通の人間でなくなってしまった自分の体のことを、理解できた気がした。
 と、この時、ようやく魔女の結界が消滅した。これまで二体ほど魔女とは対していたが、そのどちらと比べても、倒してから結界が消えるまでの間が、長く感じた。
…気のせい?…
「あちゃ〜…キレイなドレスが、ボロボロだね…」
 そんなことを考えていた、少しボッとしていた私に、キリカが、気の毒そうな表情で、そう声をかけてきた。
 あらためて確認すると、私の衣装は、帽子はなくなっており、全体的に破れたり千切れたり、とにかく酷い有様だった。所々…結構、きわどい場所も含めて、肌が露出してしまっていた。ちょっと恥ずかしい。とはいえ…
「別に…変身をといてしまえば、問題ないわ」
 だが、その前に、魔法少女として、やっておくべき事がある。
 私は、まだ、その場に居続け、相変わらず同じ顔の亡骸を抱きかかえたままの女の子の傍に、歩み寄った。
 とりあえず、怪我はなさそうだ。あとは、なんと声をかけて、立ち上がってもらうかだ。まさか、怪我がないからといって、悲しみにくれたままの人間を、放っておくこともできない。せっかく助かった命なのに、変な気を起こされても困る。要するに、こういう巻き込まれてしまった一般人に対するアフターケアも、魔法少女の務めなのだ。
「…もう、大丈夫よ」
 そう声をかけてみた。
 すると、女の子は、ゆっくりと私の顔を見上げた…
「…!」
 その表情、その瞳…助けてもらった者に対して向けるソレではない。そう、まるで逆。そして、出た言葉は…
「あなた…アレが、この子だと解っていながら、それでも殺そうとしていたわね…この子は、人の幸せを願って、頑張っていただけなのに…それなのに…」
 女の子は、私のことなど見ていたくないとばかりに、顔を、抱きしめている子の方に戻し、再び、嗚咽を上げながら泣き始めた。そして、ボソッと一言…

 人殺し…

「あ…あの…私は…」
 私は、そんな彼女から逃げるように後ずさりながら、それでも、何か言おうと口を開く。でも、言葉が出ない。
 それ以前に、私は、彼女の言葉を、受け止められていなかった。『人殺し』…その言葉が、頭の中で、何度も繰り返される。
…違う…私は、魔法少女として、魔女と戦っただけで…
…いいえ、そうじゃない…
…そう…私は…
 不意に、一週間前に倒した子のことが、脳裏によみがえった…
 さらに、攻撃を受けた時の、あの痛みも…
「うっ…」
 突然、吐き気が込み上げ、めまいに足元がふらついた。
「美国さん…大丈夫?」
 そんな私を、キリカが支えてくれた。
「う、うん…」
 私は、口を押さえながら、それだけ答えた。
「じゃあ、いこう」
 キリカが、そう促してきた。
「で、でも…私、あの子に…」
 謝りたかった。話しを聞いて、理解して欲しかった。
 許して…欲しかった。
「けどさ…これ以上は、ここにいない方が良いと思うよ」
 キリカが、そう言って、私を、その場から強引に移動させようとした。
 私も…抵抗しなかった。
 解っていた…どんなに謝っても、言い訳をしても…
 絶対に、許してもらえないということを…


 少し離れた所にある河川敷の広場…
 すでに変身をといていて、制服姿に戻っていた私は、川に、頭を突き出すような状態で四つん這いになり、少しの間、嘔吐し続けた。