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PN悠祐希
PN悠祐希
novelistID. 37045
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魔法少女おりこ★マギカR

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 そんな彼女に、私は、少しだけ厳しい事実を語った…
「とにかく、これだけは憶えておいてね…
魔法少女は、自分で決めて、なるものなの。誰に強制されたわけでもない…自分の意思で、たった一つの願いを叶えることと引き換えに、魔法少女となることを選ぶの。私も、キリカも、そうやって魔法少女になったわ…
あなたも…憶えていないかもしれないけど…それでも、絶対に叶えたい願い、譲れない祈りがあったからこそ、魔法少女となったはずなの。だから…今後、何を知っても、どんなに辛い事があっても、魔法少女である自分を、嫌がったり、悲しんだりすることだけは、やめてね。それは、あなた自身の選択を…その意思や想いを、否定することなのだから」
「・・・・・・」
 彼女は、すぐには、応えなかった。俯いて、自分の中で、なにがしかの答えを出そうとしているのだろう。
 だから、これ以上は、とりあえずは何も言わず、私は、再びキッチンに立った。

 私は、作った料理をテーブルに並べ終えると、キリカの隣の席に就き…
「食欲ないかもしれないけど…少しは食べた方が…」
 俯いたままの彼女に、そう促した。
 すると…
「…こんな時でも…お腹って、すくんですね…それとも、私が、魔法少女で、普通じゃないからなんでしょうか?」
 彼女が、唐突に、そんな事を言った。
 私とキリカは、思わず互いに目を見合わせ、プッと吹き出してしまった。
「な、何がおかしいんですか?…これでも、私、真剣に悩んでいるんですよ?」
 彼女は、さも心外だと言わんばかりに、抗議してきた。
「ま、まあ、魔法少女ったって、食べなきゃ身が持たないってあたりは、普通の人間と変わらないわけだしね…お腹がすくってことは、良いことだよ」
 キリカが、そう答えた。
「とはいえ、今の状況で、お腹がすいたと思えるのは、魔法少女とか関係なく、あなたの心がタフな証拠よ。だから、心配しないで。さあ、食べて」
 私も、そう言ってあげた。
 そんな言葉で、納得できたとは思えない。それでも…
「…はい…頂きます」
 彼女は、返事をし、フォークを取ると、少しずつならがらも、料理を口に運んでくれた。
 私とキリカも、それを見てから、食事を始めた。
 しばらく、三人で、黙って食べていたところ…
「…私…自分が魔法少女で…普通じゃないとか言われて、凄く不安だったんですが…でも、お腹がすいて、こうしてご飯を食べて美味しいって感じられて…案外、普通の人と、それ程、変わらないのかな…って、思ってしまってるんですが…そのあたり、どうなんですか?」
 彼女が、唐突に、そう訊いてきた。
「その認識で、問題ないと思うわ。見た目も、体の機能も、生活も、社会的にも、私達は、あくまでも普通の人間よ。ただ、特別な能力を与えられ、それゆえに、普通の人間では出来ない仕事、普通の人間はしなくても良い事を、しなければならない…それだけよ」
 私は、そう答えた。
「特別な…こと?」
「だけど、記憶を失っているだけならまだしも、自分の能力すら発揮できない状態だとしたら、その特別な仕事はできないし…普通の人間はしなくても良い事も、しばらくはする必要はないわ。もう少し、色々と落ち着いてきて、それでも思い出せないようなら、教えてあげるわ」
 ここは、あえて、そういう言い方をした。
「…記憶もない上に…役立たずなんですね、私…」
 彼女は、悔しそうに、そう呟いた。
 そういうつもりでは、なかったのだけど…
「とにかく、あなたのことは、私達が、なんとかするから…落ち着くまでは、この家にいるといいわ」
「…はい…お世話になります」
 記憶もなく、自分が誰かを証明するような物がないという状況では、思うところはあったとしても、私の申し出を受け入れるより他にないということは、理解しているようだ。だから、素直に受け入れてくれたのだろう。
 まあ、私達としても、素直でいてくれるのは、非常にありがたい。
「そうなると、名前が必要よね?」
 私は、そう切り出した。
「名前…ですか?」
「そうよ。いつまでも、『あなた』とか『君』のままじゃ良くないわ。いつまでか判らないけど、しばらく一緒に暮すんだから」
「…そうですね。じゃあ、お任せします」
 そうとなれば…当然…
「まどか…そう呼ばせてもらうわ」
 私は、彼女に、そう提案した。
「まどか…ですか?」
 彼女が、そう訊き返してきた。
「嫌?」
「いえ、そうじゃないんですけど…ただ、本当に、そう呼ばれていたような…そんな懐かしさを感じたんです」
 その答えを聞き、例え記憶を失っていても、この子は、まぎれもなく、《まどか》なのだと思った。
「じゃあ、決まりね…あなたは、今から、まどかよ」
「はい」
 こうして、彼女は、この世界でも、まどかとなった。