二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
PN悠祐希
PN悠祐希
novelistID. 37045
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔法少女おりこ★マギカR

INDEX|24ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

「それ以来、まどかさんは、ずっと、この家で暮らしているわ…
 言語や一般常識といった知識に関しては、なんとか残されていたようだけど…
 まどかさん自身の記憶は、今も完全に失われたまま。おそらく、戻ることはないわ。だから、あの子は、まどかさんであって、まどかさんじゃない。当然、あなたのことも、憶えていない…
 でもね、自分がつらい状態でありながら、それでも、私達のことを想いやってくれてる…
 私が、近所の人に酷い事を言われていたのを見て、彼女、まるで自分のことのように悲しんでくれたわ…
 ゴミとかを投げ込まれても、黙って片付けてくれて…
 二日ほど前には、どうやって侵入したのか、酷く荒らされてしまった表の庭の薔薇を、一緒に直してくれて…それ以来、あの子が、家の薔薇の全ての手入れをしてくれているし…
 壁の落書きも、あの子、毎日消してくれてるのよ。それでも、落書きはなくならないし、作業の間に、あの子にも、心ない言葉をぶつける人はいるのだけど…それでも、あの子は、笑顔のまま、黙々と続けてくれて…
 おかげで、落書きも、不法投棄も、以前に比べて、随分と減ったわ…」
 その織莉子の話しを聞きながら、ほむらは、おそらく昼間のうちに書き加えられてしまった塀の外側の落書きはともかくとして、玄関までの通路や、表の庭、そして、それらを囲う手入れの行き届いた薔薇の壁を、思い出していた。
…そうか…あの子が…
 そんなことを考えている ほむらの表情からは、もはや、織莉子に対する不信感や、敵意のようなものは、微塵も感じられない…非常に穏やかで、にわかに笑みも浮かべているようだった。
 織莉子は、その様子の変化に、気がついているのか、いないのか…とにかく、話しを続ける…
「はじめの二日くらいは、遠慮がちで控えめな感じだったけど…それ以後は、積極的に家事を手伝ってくれたりするようになって…私とキリカの大好きな紅茶の淹れ方も、ちゃんと憶えてくれたわ…
 私、そんな事する必要ないって何度も言ってるのよ…
 だって、この世界に、無理矢理、あの子をとどめてしまったのは、こうして考えてみると、私の一方的な…ワガママみたいなもので…だから、私には、あの子を保護する義務がある。もちろん、そんなことまで教えてあげているわけじゃないから、私の事情を知る由もないのは当然とはいえ…だけど、あの子、決まってこう言うの…」

『こんな、どこの誰かも判らない人間に、衣・食・住だけでなく、名前まで提供してくれてるんですから…』
『それに、こんな私が、どんなに些細でも、織莉子さんやキリカさんの役に立ててるなら、それは本当に嬉しいことだなって…』

「些細なんて、とんでもない…あの子が、この家に来てから、私が、あの優しさ、あの前向きな明るさに、どれだけ助けられているか…
 キリカも、ちょっと前までは、素直すぎる子供のように私を盲信して、ただ指示に従っているような部分もあったのだけど…今は、『妹ができたみたい』…って、喜んで気にかけてくれて…あの子が家にきてから、キリカも、確実に心が成長しているわ…
これでは、どちらが助けて、助けられたのか、解らなくなってしまうわね」
 織莉子は、最後は、少し自嘲気味な感じで、そう話しを締めくくった。
「優しくて明るいか…記憶がなくても…それだけは変わらなのね…」
 ほむらも、織莉子の話しを聞き、そう呟いた。
 そう…それこそが、自分が魅かれた…『まどからしさ』なのだから。
「さて…それで、ようやく用件に入るんだけど…」
 織莉子は、今一度、真剣な表情で、ほむらを見つめ…
「私とキリカだけだったとはいえ、再編前の記憶が残っていたことから、同じく再編に深く関わっていたあなたも、もしかしたら…って思っていたわ。でも、確証はなかった。それでも、もしも、私達と同じく、記憶が残っているなら、どうしても、あの子に会わせたかった。だから、意地悪なやり方だとは思ったけど、あんな探り方をしてしまったわ。本当に、ごめんなさいね」
 まず、そう謝罪した。
「かまわないわ。あなたが考えていたとおり、普通に誘われても、今の話しを聞く前の私だったら、間違いなく応じなかったはずだしね」
 ほむらが、フッと笑みを浮かべながら、そう答えた。
「では…ここまでの話しを聞いてもらって、まどかさんの状態を理解してもらえたということで、あらためて、あなたに相談したいことがあるの。よろしいかしら?」
 織莉子が、そう持ちかけた。
「とりあえず、言ってみて。まどかの為に、私にできそうなことなら、どんなことだって協力するわ」
 ほむらが、ハッキリと、そう答えた。
 すると…
「今後、まどかさんを、どうするべきだと思う?」
 織莉子は、それは真剣な眼差しで、ほむらを見つめながら、そう訊ねた。
「どうする…って、あなた…例え、どんなに困難でも支えになるって決めて、まどかを、この世界にとどめたんじゃなかったの?」
 ほむらが、そう言い返した。
「もちろん、あの子の支えになることを、放棄するつもりはないわ。ただ、このままでは、あの子は、この家で、私やキリカ、あとは、あなたとだけしか関わることのない、そんな生活を送ることになってしまうわ。魔法少女としての能力に目覚め、魔獣と戦うことになっても、人としての基本的な生活は、今のままでは変わらない。それで、いいのかなって、思うようになってしまったの」
 織莉子が、そう答えた。
「ですが…例え、普通の人との暮らしはできなくても、魔法少女として戦うことはなかったとしても、少なくとも、同じ魔法少女である、巴・マミや佐倉・杏子…それに、エリーゼの仲間達は、まどかを受け入れてくれるはずよ。そんなに深刻に考える必要は、ないのでは?」
 ほむらの考えは、おそらく、間違ってはいない。
「そうかもしれないわね。だけど、私、あの子の未来を、予知しようと、何度も試しているんだけど…どうしても、未来が見えないの。それが、どんなに近い…それこそ、数分後の未来すらも。もしかしたら、彼女は、まだ、この世界に存在する者として、この世界に認められていないんじゃないかって思ってしまって…そうしたら、これから、どうすればいいのかも解らなくなってしまって…不安なの…あの子は、間違いなく、ここにいるのに…」
 織莉子は、ブルブルと身を震わせながら、そう告げた。
「…あなたの考え、あながち、間違っていないのかもしれないわ…」
 ほむらが、唐突に、そんな応えを返してきた。
「え?」
「以前、何かのアニメか漫画で、その中のキャラが、こんなような事を言っていたわ…」

『我、観測す…ゆえに、宇宙あり』
『この世に、人間なる知的生命体がいて、物理法則や定数を発見し、宇宙はこのようにして成っていると観測できて、初めて宇宙そのモノの存在が知られたという理屈』
『ならば、宇宙を観測する人間が、もし、地球でここまで進化することがなかったら、観測する者がいない以上、宇宙は、その存在を誰にも知られることがない』
『つまり、あってもなくても同じこと』
『人間がいるからこそ、宇宙は存在を認められている』

「《人間原理》という、人間本位な理屈なんだけど…