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PN悠祐希
PN悠祐希
novelistID. 37045
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魔法少女おりこ★マギカR

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 私は、ずっと、ある人物を助ける為だけに生きていた。
 その人物の名が、鹿目(かなめ)・まどか。
 ピンク色の綺麗な髪を、赤いリボンで両サイドに結っている姿が印象的な、明るくて、ひたすら優しい少女だった。
 彼女は、私の命の恩人であり…
 虚弱な身体と、何よりも内気な性格が災いし、友達と呼べる人が誰もいなかった、こんな私を、『友達』といってくれた、初めての人だった。

 私の魔法は、時間の逆行。同じ時間を、何度もやり直すことで、未来を変えようとした。
 だけど…何度繰り返しても、まどかの運命を変えることは、できなかった。
 戦闘力は、繰り返される時間の中で、着実に高くなっていた。弱かった身体も、魔法によって、人並み以上の感覚と運動能力を持つよう強化していった。心臓を病んで入院していた、かつての自分が嘘のようだ。
 なのに、どうしてもワルプルギスの夜を倒せなかった。
そのせいで、最終的には、まどかは、キュゥべぇと契約し、魔法少女となってしまうのだ。
 それでも…何度でも繰り返す…
 たった一人の、私の友達…
 あなたの為なら、私は、永遠の迷路に閉じ込められても構わない…

 ところが…

 時が繰り返されるたびに、魔女化した まどかは、巨大になり、凶悪化していった。最後に まどかの魔女化を見た時には、その力は、十日で地球を滅ぼすことができるという程だった。

 以後に繰り返される時間軸では、キュゥべぇは…それまでの時間軸の記憶は有していないはずなのに、まどかに、それだけの資質があると見出し、執拗に契約を求めるようになっていった。
 その、まどかの魔法少女=魔女としての資質を、圧倒的なまでにしてしまった原因は、私にあった。

 魔法少女としての潜在能力は、背負い込んだ《因果》の量で決まるという…
 一国の女王や、救世主として崇められた者ならともかく、ごく平凡な人生だけを送ってきた まどかに、ワルプルギスの夜すらも凌駕する程の強大な魔女となる莫大な《因果》を秘めているなど、本来ならありえないはずだった。
 ところが、私が、『まどかの安否』を理由に、何度も何度も時間をやりなおすたびに、まどかの存在を中心に、私が過ごしてきた幾つもの時間軸を、螺旋状に束ねてしまったのだ。
 その結果、絡まるはずのない時間軸の因果線が、すべて、まどかに繋がってしまった。
 キュゥべぇ、曰く…
『お手柄だよ、ほむら…君が、まどかを、最強の魔女に育ててくれたんだ』

 その話しをキュゥべぇから聞かされた時、私は、自分自身の行いが、結果として、まどかが魔女化してしまう運命に導いてしまっていたと考え、絶望しかけた。
 だが、そこで、かつて交わした約束を思い出した。
 そうだ…諦めてはいけない…
 この時間軸で、まどかを魔法少女にすることなく、ワルプルギスの夜を倒し、すべてを終わらせる…
 そう決意した。

 繰り返せば繰り返すほど、まどかとの時間はズレていった…
 気持ちもズレて、言葉も通じなくなっていく…
 たぶん、私は、もうとっくに迷子になっていたんだと思う…
 けれども、私の中で、揺るぎない想いがある…

『まどかを救う』

 それが、私の最初の気持ちであり…今となっては、たった一つだけ、最後に残った道しるべ…

 しかし、やはりワルプルギスの夜は、倒せない…
 もしかしたら、まどかだけではなく、ワルプルギスの夜にも、私が繰り返した時間の因果が、絡みついていたのかもしれない。『まどかに戦わせずに、ワルプルギスの夜を倒す』という目標こそが、『まどかを救う』という願いを叶える唯一の方法だと考えていたのだから。
 もっとも、その時の私には、そこまでの考えに至れる余裕はなかった。
 私は、攻撃を受け、動けなくなってしまった。円盾の砂時計も、すべて落ちきってしまい、時間停止の魔法も使えなくなっていた。
「どうして…何度やっても、あいつに勝てない…」
 思わず、時間を戻そうと、盾に手をかけた。
 だが…
「繰り返せば、それだけ、まどかの因果が増える…」
 瞳から、涙がこぼれて止まらない…
「私がやってきた事は…結局…」
 心が、絶望に染まっていく…
 それに反応して、左手の装飾として備わっていたソウルジェムが、黒く濁っていく…
 人々を助け、希望をもたらすはずの魔法少女が、最後には、完全に希望を打ち砕かれ、絶望し、魔女と化す…
 そのような事を実感し、愚かで無力で惨めな自分に嫌悪しながら、私は、絶望していった。
 もうじき、美樹・さやかや、あのワルプルギスの夜と同じように、この絶望で人々を呪うだけの魔女となる…
…まどか…約束、守れなくて…ごめんね…
 その思いが、悔いとなり、さらに絶望感をあおった。
もう、ほんの少しの救いもない…
 あとは、ひたすら、堕ちるだけ…

「もう、いいんだよ…ほむらちゃん」

 不意に聞こえてきた声…
 とっさに、そちらに視線を向ける…
 そこには、彼女がいた…
「まどか…まさか…」
 そして、ここに、まどかが現れた理由を、私は、良く解っている…
 まどかは、私に、ニッコリと微笑んで、こう告げた…
「私…魔法少女になる」
 この時の まどかは、これまでの時間軸の彼女と違い、魔法少女や魔女に関することを、すべて知っていた。実際に見て、私が何度も忠告し、キュゥべぇからも様々な話しを聞き出し、聞かされていたからだ。これまでの長い人類の歴史の中、インキュベーターの企みにより、友人達を含む、数多の魔法少女達が、悲しみと絶望のどん底に叩き落とされてきたかも、理解していた。
それでも、なお、魔法少女になるという。その決心に、もはや揺るぎはないのだろう。
 だからといって、そんなことを認めるわけにはいかなかった…
「そんな…やめて…」
 なんとか出た声で、懇願する。
 しかし、そんな私の声など無視し、待望の人物との契約をとりつけようと、キュゥべぇが営業トークに花を咲かせていた…
『数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君ならば、どんな途方もない望みであろうと叶えられるだろう』
 まどかは、その説明を聞き、キッと表情を引き締めた。
「まどか…」
 私は、それでも彼女を止めようと、その名を呼びかける。
 すると、まどかは、倒れたままの私の傍にしゃがみ込み、私の顔を、笑顔で見つめた。そして、想いを語ってくれる…
「ほむらちゃん…私、やっと解ったの…叶えたい願い事、見つけたの…だから、その為に、この命、使うね」
「やめてよ! それじゃあ私は、今まで何の為に…」
 まるで駄々っ子のように、自分の主張を喚く私…
 そんな私の手を、まどかは、優しく握ってくれた…
「…!」
「これまで、ずっと、ほむらちゃんに守られて、望まれてきたから、今の私があるんだと思う…だから、信じて」
 まどかは、そう答えると、スッと立ち上がり、キュゥべぇと向き合った。
『さあ、鹿目・まどか…その魂を対価にして、君は、何を希(ねが)う?』
 そして、まどかは、願いを告げる…

「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい…
全ての宇宙…過去と未来の全ての魔女を、この手で…」

『…!? その祈りは…』