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アノンの父親捏造まとめ

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『本日午後2時半ごろ、天界に不法侵入した地獄人が○○百貨店の外壁の一部を破壊した事件で、先ほど従業員・買い物客は全員店外へ避難していたと報じましたが、瓦礫の下敷きになった死者が何名かいた模様―――』
 赤い西日がさし込む静かな部屋で、テレビが喋る音だけがしていた。
 つい先ほど病院から帰宅して以来一言も話さずテーブルに突っ伏している父親を、ロベルトは心配そうに覗き込む。
「まー…おなかすいた?」
 涙の痕が残る顔を、マーガレットはようやく上げた。
「ロベルト……」
 朝はきちんと編まれていた絹糸のような金髪は、すっかり乱れている。そんな父の顔を見て、ロベルトはにっこり笑った。…妻の笑顔に瓜二つだった。
「いいこにしてまってたら、ママすぐかえってくるよ。ごはんつくってくれるよ」
 お腹をすかせた息子にいつも自分が言う言葉だった。
「…ロベルト…っ」
 マーガレットは溜まらなくなり、自分を見上げるロベルトを抱きしめた。病院へも一緒に行ったというのに、血まみれの彼女を見なかったこの子は母親が死んでしまったということが分からないのか。
「どうしたの、まぁちゃん」
 不意に聞き慣れた声が聞こえたような気がして、マーガレットは手を離した。目の前にはさらさらの金髪の、息子がいた。
「まぁちゃん。泣いてるの?」
 それが妻に言われているような気がして、彼女がまた家にいるような気がして。
(そうだよ…あの時彼女は何て言った?)
 瓦礫の下敷きになる寸前に聞こえた、轟音と悲鳴の中の声が甦る。
 ―――ロベルトをお願いね。
 マーガレットは涙を拭って笑った。いつも妻が見せていてくれた、明るく無邪気な笑顔を目指して。
「大丈夫だよ、ロベルト。もう失わないから。…絶対に」
 これからはこの愛する息子を、ずっと大切に守っていこう。彼はそう、心に誓ったのだった。
 5月8日のことだった。