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満たされた腹を知らず

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 食前の祈りを捧げてスペインは食器をとった。
「ロマ、ご飯やで」
 スペインが二人に言ったことには何の偽りも無かった。スペインは朝ロマーノにおはようと言い、食事の度に美味いかと聞き、寝る前には安らかな眠りを願っておやすみと言っているのである。
「ロマ、美味い?」
 返事は期待していない。そういうものだと分かっているからだ。そして、一人分の食事で足りるはずは無いだろう何せ二人分の栄養だと考えることは面白かったが現実は違う。それなりに膨れた腹を抱えてスペインは食後の挨拶を腹にする。
 起きて、食事をして、書類を片付けて、食事をして、時折畑仕事をして、折々戦場を回って、時々上司から小言を貰って、食事をして、寝る。
 その端々でスペインはロマーノに話しかける。
「おやすみ、ロマ」
 ロマーノがスペインの隣で寝るようになってから欠かしたことの無かった挨拶も、スペインは変わらず続けていた。

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作品名:満たされた腹を知らず 作家名:あかり