ideal
ゾロが自分の着ているものを脱ぎ、
サンジの着ているものも脱がしていく。
どうしてお前はこんなに慣れた手つきなんだろうな・・・
初めての時もそうだった。
『お前の服ボタン多すぎだな、自分で脱いでくれ。』
『お前が服を着てないだけだ。』
『帽子があるからな。』
『服じゃねぇよ。』
男とヤったことなんておれは無かった。
でも、お前は違ったんだな。
『なぁ、この先どうすんだ?』
『・・・は?』
『男とヤるのはサンジが初めてなんだ。』
『誘ったのあんただぞ!?』
『サンジ、教えてくれ。な?』
『・・・・・・・たく・・・』
身を任せるおれの体は激しく揺れ続ける―――
昨日、触れられて一番最初に感じたのは嫌悪。
ゾロとは違う体、体温、声。
全てに嫌悪感を抱いた。
それを感じ取ったお前はひどく優しくおれに触れた。
その優しくとまどいが伺える手に俺は安心感を覚えた。
心が受け入れ、体が受け入れると、罪悪感を感じるようになった。
船の上では俺はゾロの『恋人』であったはずなのに・・・・。
『お前は悪くない。』
『悪いのはおれだからな。』
『忘れろ。』
『おれを見ろ。な?』
『サンジ。』
『大丈夫だからな。』
言葉全てが優しかった。
その行為で満たされたことのない部分が満たされるのを感じた。
エースとお前はまるで違ったよ・・・・・
「誰のことを考えてる。」
気づくと激しく揺れていたはずの体が止まっていた。
背筋が凍っていくのが分かった。
「・・・ゾロ・・、」
「どいつのことを考えてやがった。」
「・・・ゾロ、何言っ――
「エースか?」
「・・・・っ・・・・」
「・・・。」
「・・・・ゾロ・・?・・・・ゾロ・・ヤメっ・・・・・・・・
ただ泣き続け、快楽など感じない、
暴力のようなそれを朝までこらえ続けていた。
ベッドを降りたゾロが服を着て、ドアに向かっていくのが見えた。
必死に体を起こして声をかけようとするが、叫び続け痛めた喉からは音が何も出てこない。
必死に手を伸ばし、呼び止めようとすると、ベッドから落ちた。
ドスンという音に気づき、ゾロが振り返る。
だが、サンジを見る瞳はどこまでも冷たい。
「・・・・・・・・っ・・・っ・・。」
「・・・。」
サンジは必死に呼び止めようとしたのだが、
ゾロは何も無かったかのように部屋を出て行った。
今、ここで、これで離れてしまったら、
おれたちは終わる。
おれたちの関係は終わる。
お前はそれでいいのか?
こんなにも、苦しいのはおれだけなのか?
おれは・・・お前の何だった?
ベッドの下でサンジは泣き続けた。
服を着る力も無く、笑顔を作る余裕も無い。
エースと寝たのは・・後悔しない。
おれには、必要だった。
でも、それが呼んだ結末はあまりに辛い――