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ideal

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涙が枯れた頃、
ゾロが出て行ったドアがコンコンと鳴った。
ぼんやりした頭で振り返ると、そこに居たのは・・・


「・・・・・サンジ・・。」

「・・エ・・・・・・」

「・・・・っ・・・・・・。」

見るのも辛い姿でベッドの下に居る。頬には泣いた跡。
身体に赤い跡が沢山残されて、それと同じほどに痣がある。
ベッドの上には血がついたシーツ。
サンジがどんな目にあったかは・・・明白だった。

エースは走り寄り、サンジを抱きしめた。
その温もりに枯れたと思っていた涙が溢れ出す。

「・・・・サンジ・・ごめん、ごめん・・」

「・・・・・。」

「ごめん・・・ごめん・・・・。」

「・・・・・。」

謝り続けるエースにお前は悪くないと伝えたかった。
でも、声が出なかった。
どうしたら伝わるか考えて、サンジは自然と、エースに口付けた。


「・・・・・・・ごめんな・・・・サンジ・・」


その日は、そのままホテルに泊まった。
部屋だけは変えて。

動けないサンジの代わりにエースは何でもやった。
サンジをお風呂に入れ、傷口の消毒。
食事を食べさせたり、面白い話をしたり。

夜はサンジを包み込むようにエースが抱きしめて寝た。



翌朝、声も少し出るようになり、痛みは残るが、歩けるようになった。
エースに支えられながら戻ると、船番をしていたナミが驚く。
体調が悪いだけと言い訳をして、男部屋へひっこむ。

「エース、ありがと・・な。」

「大丈夫か?」

「あぁ。」

「あいつと航海続けられるのか?」

「・・・・・・へいき。」

「海は広い。」

「・・・そう、だな。」

「船は狭くないか?」

「・・・心配性だな、」

「うーん、俺はただ離れたくねぇんだよ。」

「・・?」

「サンジと。」

「何言って・・」

「サンジ、」

「・・・。」




「おれはお前が好きだ。」





「・・・・っ!!!!」

「本気だ。」

「・・・・・・エー・・」

「同情でもない。最初から狙ってた。」

「・・・・・・・でも・・」

「忘れさせてやるから。」

「・・・・・っ・・・」

「おれに夢中にさせるから。」




いつもならすぐに手をのばして、
触れてきたり、抱きしめたりする。
なのに、今は膝の上に硬く拳を作ってる。
もしいつもの通りだったなら、
きっと『冗談やめろ』なんて言って誤魔化したんだろうなって・・・
頭の片隅で考えていた。

でも、おれが実際に動かした手はエースを求めて伸びている。
震える口から漏れた言葉は、



「・・・・・・・忘れ・・させて・・・くれ・・。」




作品名:ideal 作家名:おこた