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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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Holy and Bright

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 「……ごめんなさい……もうこんなこと、してもらえる……立場じゃないのに……」
 駆けてくるルゥ、そしてルヴァとパスハの姿がジュリアスの目に映った。
 「……銀のボタンを……押したのだな」
 背後でこくんと頷く気配がする。ジュリアスは嘆息した。
 ……私の所為<せい>か。
 「酷い……ですよね、私。要らないって言ったり、かと思うとぎりぎりまであなたの力を頼って。女王候補失格で当然です」
 「アンジェリーク……?」
 「怪我……してるのに……」
 「アンジェリーク!」
 荒げた声に、びくりとした気配が背中に伝わる。だが今は躊躇している場合ではなかった。伝えなければならない−−まさに今すぐ言葉と態度で、しっかり理解してもらえるように。
 私の思いを。
 「私は、このエリューシオンにおいては……あなたの、光の守護聖なのです。ですから」
 肩を支えるアンジェリークの指先が震えた。空いている手でジュリアスはその指先を掴んだ。
 「あなたは思う存分……私を使いなさい。私はそのために」
 大きく息を吸うとジュリアスはアンジェリークの顔を顧みて言った。
 「存在しているのです……アンジェリーク様」

 
 そしてあなたは、私を見て笑う。
 初めてちゃんと……笑った顔を見せてくれた。
 昨日の儚げな笑みではない。私にだけ向けられた、心からの笑顔。
 ……なんて優しい表情なんだろう。
 アンジェリークは、黙って頷いた。胸がいっぱいで、頷くことしかできなかった。

作品名:Holy and Bright 作家名:飛空都市の八月