Holy and Bright
窓だけを開け放したまま、ジュリアスはアンジェリークの部屋のドアを閉め、自分の部屋のドアも閉めると疲労困憊した様子でベッドに横たわるアンジェリークを見た。彼女はジュリアスの苦闘ぶりも知らぬまま、すぅすぅと寝息をたてている。一見、穏やかそうには見えているが、いわば中毒症状を起こしているようなものだから、心配であることには変わりない。
あの香りはまだ色濃く残っている。洗い流せばそれなりに消えるだろうが。
そこまで思ったジュリアスの思考がぴたりと止まる。
……まさか……私が……洗うのか?
彼女の……体を?
まるで少年のようにジュリアスは頬を紅潮させて立ちつくす。
エリューシオン最後の夜は、愛情を忠誠心に変換させようとしていた彼にとっては、まさに最低最悪の夜となった。
作品名:Holy and Bright 作家名:飛空都市の八月