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いやよいやよも

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 想像してほしい。

 自分には恋人がいるとする。
 現在自分は連泊の出張中で、恋人は一人自宅で自分の帰りを待っているのだとする。
 思慮深い恋人は俺に気を使って出張中は電話をかけてこない。
 緊急事態は別として、もっぱらメールでのやり取りになる。と、する。
 恋人はブログを書いているのでこちらからアクセスすれば彼の近況は大体把握できる。
 今日はまだ更新されていないが、昨日の内容はここ暫くの内で特に良かった。
 最近親しくさせて貰っている病院へ遊びに行った様で、入院中の子供たちに遊んでもらって至極ご満悦だったそうだ。彼特有の文面もさることながら特に写真が良かったと思う。病院のスタッフが兄さんの携帯で撮影したもので、タイトルは『わんこに人気を奪われたお兄さんの図』だそうだ。犬用のボールで小鳥と遊ぶ兄。
 とても良いと思う。さっそく保存した。
 木陰に座して拗ねたように唇を尖らせした姿がなんとも良い。穏やかな休日だ。俺も一緒にいられたならば良かったのに。もし一緒に居られたら・・・そうだな、「別に俺様寂しくねーし」等と涙目になっている所に寄り添って宥め賺し、甘えさせ、飴でつり、機嫌が良くなった所で犬用の首輪をつけ「なぁ、これって・・・」と疑問に思わせる暇も無いように一日構い倒してそのまま夜まで持ち込む。夕食の席、空腹の兄さんに酒を飲ませ、普段よりも早く酔いが回るのを確認してから先程装着させた首輪に縄を・・・いや、鎖が良い。銀だ。銀の鎖を繋いで重さに慣れさせる。嫌がってぐずる様ならここで甘いデザートでも出して気を逸らせ、満足させたらシャワーだ。程好い疲労に程好い酒。そんな状態での風呂上りの気分は最高だろう。後は寝るだけと気持ち良さそうにソファに身を預け、瞼を重くする兄さん。しかし首には首輪。繋がった鎖の先を握っているのは俺で。思い出した首輪に半分ほど覚醒した兄さんが怯えの混ざった疑問の視線を寄越す。もちろん期待を外さない様に綺麗に微笑みかけてやってから・・・いかん、かなり脱線した。

 話を戻す。
 会議もスムーズに進み帰宅を明日に控えた夜、ホテルの部屋で寛いでいると、俺の携帯に恋人から電話がかかってきたとする。
 緊急事態ではないらしい。「いつ帰ってくる?」と聞いてきた。
 ここで恋人の恋人たる自分はこう思う。「ああ、自分がいなくてさみしいのだな」と。
 しかし自分も相手も大人だ。ここで仕事を放り出して飛行機に乗ってしまえば皆に迷惑がかかることは明白である。「まだ仕事が残っている。明日の夜には帰られる筈だから、もう一晩だけ待っていてくれ」と俺は優しく嗜める。
 今までの経験と彼の性格を考慮すれば恋人は「そうだよなー」か「ちぇっちぇのちぇー。んだよ、けち」のどちらかを返す筈、と受話器からの返答を待っていたとする。 










 『明日の、夜。』
 「そうだ。早ければ夕方には着くかもしれないが、今の予定ではな。」
 『・・・・。』
 「すまない。後一日だけ我慢してくれないか?」
 『・・・・ヴェスト。』
 「なんだ?」
 『・・・・。』
 「兄さん?どうした?」
 『・・・・        あいたい 。 』
 「―ッ!!!!!!」





 


 軽く脳内の血管が焼き切れた。
 「そうだよなー」も「けち」もどちらも返ってこなかったんだ。
 あの兄さんが
 意地っ張り見栄っ張りの虚勢っ張りの兄さんが、
 あのどんなに良いムードでも平気でぶち壊す声量と鈍感さを持ち合わせた兄さんが!
 自分の要求を呑まなかった俺に対してあのけたたましい怒鳴り声ではなく、淑やかな、切なげな声で「会いたい」と言って来たんだ!
 仕事なんかどうでも良い。しかし、良い年齢の人(国)が私情120%で帰るのはいかがなものか。でも今のギルベルトは想像を絶する表情をしているに違いない。是非とも見てみたい。いやいや、やましい思いではない。出来る事ならばその表情のまま涙を湛えて斜め下から懇願する様に見上げて欲しい等とは思っていない。俺は国なのだ。大事な会議をそのような浅ましい考えで/考えてなどいない!大体なぜ今回の会議は日本で行われているのだ!いっそ自宅で開いてしまえば兄さんを始終目に届くところに置いておけると言うのに。嗚呼、すまない菊。会議をないがしろにしようとは思っていない。が、しかし。どうしてくれようこの気持ち!

 なぁ、想像してくれ、こんな時俺はどうすればいいと思う!?
 お前ならばどうする!?


作品名:いやよいやよも 作家名:akira