【パラレル】綺麗なワカメと間桐家と
事情があって、桜の事を考えての養子だったってのも理解はしたけど、結果がこれじゃあ好意なんか持てる訳が無い。
それはそれとして、白日の下に晒された間桐の内部。ぶっちゃけ暗部。
流石にジジイもこれ以上続けられる訳が無い。
監視なんかも付けられて、特殊な病院に入院したままだ。生きてる内には出られないらしい。そりゃそうだ。つーか出てくんな。
今、この家に住んでいるのは三人。
本人的には全く嬉しくないだろうが、間桐の当主となった雁夜。その養子のままの桜。ついでに引き取られた僕だ。
桜は遠坂の家に戻るという選択肢もないではなかったが、雁夜の傍にいたいが為に自らそれを選び。
僕は僕で母方の家に戻っても良かったと思うのだが、勢いや感情の赴くままにやりすぎた気もしていて。
何が起こるかわからなかったので、結局母が巻き込まれるのを回避する為に間桐に残った。
……桜と雁夜を放っておくのも心配…いや、怖かったし。知らない間に衰弱死とかされたら流石に寝覚めが悪い。
某元凶当主の家が全面バックアップすると約束してはいたが、どうもあの家の連中は信用ならなかったしな……。
うっかり具合が酷すぎるだろう、あいつら。
桜にはあのうっかり遺伝子発現しませんように。
不本意ながら、これが最近の僕の一番の願いだ。
「……これくらいにしておくか」
息を吐いて、伸びをする。
首を回すとゴキゴキ鳴った。
パソコンの電源を落とし、カップに残ったコーヒーを啜る。めっちゃ冷たい。くそう。
「それにしても、面倒だなぁ……」
この家は無駄に名家な為、色々面倒事がある。
あのクソジジイの力が及ばないと知り、チョッカイを掛けてくる連中も出てくる。
そいつらの情報集めやら何やらはもう日課だ。処理は遠坂の連中に任せるが。
雁夜は間桐の家なんかに未練は無いから、あとはこじらせた初恋ぶっ壊せれば海外に高飛びして勝手に桜と結婚して幸せな家庭とやらを持つのも可能なんじゃないだろうか。
僕はまぁ、一人暮らし位出来るし。
日本の法律なんか知るか。元々ジジイの無茶苦茶なやり方がアレすぎるんだ。
そこらはどうにかしてやるさ。あいつらの頭じゃどうしようもないだろうしな。
「……早くくっつかないかなぁ、あの馬鹿共」
桜はあれでも頑張っている方だと思う。
しかし雁夜がサッパリだ。
雁夜にとって桜は永遠の庇護対象だし、立場的にも父親だから仕方ないとは思うんだが。
「……味方が欲しいな」
桜の後押しをしてくれる様な人が。
遠坂凛は、実は全部知っている味方側だ。……だが正直あのうっかり姉はここ一番で頼りにならない。
「……周りから固めるのは常套手段だろうが……」
まずは雁夜の意識改革だよな。
結局そこに行き着いて、僕は深く溜息を吐いた。
作品名:【パラレル】綺麗なワカメと間桐家と 作家名:柳野 雫