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【パラレル】綺麗なワカメと間桐家と

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「……最近、桜ちゃんがよく解らなくて……。思春期の子供って、難しいよな……」
「雁夜君……」
 返るのは、気遣わしげな声。
 ベンチに並んで二人。
 公園なんかに呼び出して愚痴なんて情けないとは思う。
 しかもそれが、嘗ての思い人とか滑稽に過ぎる。
 でも、こんな事を相談出来る相手なんて他にいない。
 正直恥ずかしいが、桜ちゃんの為だ。あの子ももう高校生。父親として頑張ってるつもりだけど、男親にはやっぱりどうしようもない部分もあるんだろう。
 なら、桜ちゃんの実の母親である葵さんに意見を貰うしかない。
 時臣はどうでもいい。あのうっかりゆーがたれ馬鹿なんぞに意見なんかされたらきっとまた慎二君が切れる前に俺が切れる。
 ……慎二君は俺より桜ちゃんに年が近いせいか、仲良いよなぁ。……ちょっと寂しいなぁ。
「……雁夜君?」
「え、あ、な、なんでもないよっ」
 思わず寂しくなってしまった……。
 いかんいかん、こんな事考えて一人で寂しくなってどうする!!
 ……ああ、でも、
「……桜ちゃんが嫁に行ったらきっと泣くだろうなぁ……」
「あら、桜、お嫁に行く予定があるの?」
「うわーーーっ!?」
 しまった声に出てた!!
「いやっ、そういう訳ではないんですがっ!!」
 そして思わず敬語になってしまった。冷静になれ、冷静に。
「でも雁夜君のお嫁さんなら別に今までと同じだし、泣かなくても良いと思うんだけど……。ああ、雁夜君は桜の花嫁衣裳に感激して泣くわね、きっと」
 ………は?
 ころころと鈴を鳴らすように小さく笑い、葵さんが言う。
 いや、今何を仰られたのか理解が追い付かないんですが。
「……あの、葵さん?」
「なぁに?」
 にこにこと葵さん。
 全然普通だ。あれ、何か聞き間違いでもしたかな?
 いやまぁ、そうだよな。血は繋がってないとはいえ、俺は桜ちゃんの父親なんだし。年だって離れてるんだから。
「あ、いや、なんでもないんだ。ごめん」
「そう?」
 愛想笑いで誤魔化す。
 今は桜ちゃんの事だ。馬鹿な聞き間違いで慌ててる場合じゃないんだ!!
「いや、それでね!?」
「はい?」
「最近、桜ちゃんが一緒にお風呂に入ろうとか言ってくるんだ!!」
「……まぁ」
「年頃なのにどうしたのかと……。確かに子供の頃は一緒に入ってたけど、中学に上がる頃には一人で入れる様になったのに……」
「……そう……」
 葵さんが考え込む様な素振りをする。ああ、やっぱり心配させているだろうか。
 そうだよな、あのクソジジイに虐待されて、独りをあんなに怖がっていた桜ちゃん。
 暫くは一緒に風呂も入ってたし、寝たりもしてた。
 慎二君も凛ちゃんも、葵さんだって気に掛けてくれて、中学に上がる時に、もう一人でも大丈夫って言って、微笑ってくれた桜ちゃん。
 なのに何で今になって……。
 怖い夢でも見たんだろうか。でも何度もあるし、流石に年頃だし、断らせてもらってる。
 そういう時は哀しい顔をするから辛いんだけど……慎二君に添い寝くらいはいいんじゃないかって言われて、たまにそれはするんだけど。
 やっぱり心細くなる日もあるのかな。
 そういう時は、俺の手を握って離さないんだ。
 ……俺はあの子に何をしてあげられるだろうか。
「……ねぇ、雁夜君?」
「あ、うん?」
「桜がまたそう言ってきたら、一緒にお風呂入ってあげてくれない?」
 間。
 ………え、何、何て言ったの葵さん?
「………………いや、年頃だし………俺みたいのと一緒にとか、あんまり……」
「でも、桜がそう望んでるのよね?」
「………いや、でも………」
 確かにそうだけど、それってどうなんだろう。
 普通あの年頃の女の子って、父親とか遠ざけるって聞いたけど。
 俯いた先に、自分の足が見えた。障害の残る身体の一部が。
 ……もしかして、俺の方が心配されてるんだろうか。
 未だに足とか引き摺るからなぁ…。かなり回復したんだけど、完全には治らなかったから。
 桜ちゃんも、もう高校生。色々と考える事も多いだろう。
 ……立場的には父親だし、一時はお父さんとも呼ばれていた。けど……。
「……桜ちゃんが俺の事を名前で呼ぶ様になったのも、何か関係してるのかな……」
 負い目とか感じてしまって、お父さんじゃない、世話になっている人って感じで、介護とか?
 ………あ、やばい、泣きそう。
 昔は雁夜おじさんって呼ばれてて、懐いてくれていたと思う。
 一緒に暮らす様になって、『お父さん』ってぎこちないながらも呼ぶ様になって……。
 でも今は、名前で………まさかっ!?
「一周回って他人にっ!?」
「うん、よく解らないわ、雁夜君の思考回路」
 思わず愕然とする俺の耳に葵さんの声。
 しまった、また自分の世界に入り込んでしまった。
「何だか悪い方に考えてるみたいだけど、桜は雁夜君の事好きよ?だからきっと、頑張ってるんだと思うの」
「いや、俺も桜ちゃんの事は好きだよ!?血は繋がってないけど、俺の可愛い娘なんだから!!」
 ああそうだ!!可愛い娘なんだよ!!愛してるよ!!
「でも解らないんだ!!桜ちゃんが何を求めているのか!!俺だって応えてあげたいのに!!」
 俺に出来る事があれば、何でもしてやりたい。
 葵さんの娘だし、昔から知ってるし、それ以上に可愛い俺の娘なんだから!!
 一緒に暮らしていく内に、その思いはどんどん大きくなっていった。
 あの子の優しさに触れて、可愛らしい笑みに癒されて。
 料理も上達して、もう家事はすっかり桜ちゃんの仕事だ。本当に、立派に成長してくれた。
 考えてみれば、きっとあの子は俺の為に俺の傍にいてくれたんだと思う。
 俺が守ってるつもりで、俺があの子に守られていたんだと思う。
 だから、こんな俺でも出来る事があるのなら。
「じゃあ、応えて下さい」
「えっ?」
 唐突な、でも知っている、どころではないもう耳に馴染んだ声に顔を上げ。
 いつの間にか間近にあったその顔に驚く間も無く。
 ぷに、と。
 唇に訪れたその感触に、俺の思考はフリーズした。