魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 1
翌日早朝。
太陽が東から顔を出し始めた頃――。
戦場であるにも関わらず小鳥の鳴き声がさえずり、破壊されたT−G800の大砲の先端を止まり木にしている。
時代が変わろうが変わらないが、動物達には関係無いようだ。
そしてくすぶる鉄屑が周囲に未だ存在する中、T−900は立ち尽くしていた。
右手にマシンガンを携え、敵がいないか確認する為首を左右に動かす。
彼女の視界は赤く『表示』され、敵の稼働反応が無い事を告げる――
『NO REACTION』=『反応無し』
――と中央付近に表示されていた。
「敵機……ゼロ…」
視界を通常モードに切り替え、再び歩き出す。
不意に、彼女に近づいてくる人物。
その人物は、T−900にとって欠かす事の出来ない者――。
「此処にいたか」
マシンガンを右肩に掛けたレイルが、T−900に詰め寄る。
「任務は無事、完了しました」
「ああ、ご苦労。お前の御陰で友を無くさずに済んだ」
「当然です。私は貴方達人類を守護する義務がある」
「ふっ……それは心強い」
「このエリアに敵はいません。今後の行動命令を…」
そう告げた彼女に対して、レイルは何も言わず背中を向けて遠ざかっていく。
「……レイル?」
「周りを見てみろ」
レイルに促されるままに、周囲を見渡す。
他の兵士が同じ方向に向けて歩いている光景が、T−900の目に映し出された。
「この方向の先はお前も分かっている筈だ。自分の行動は自分で探し出す………人間に近づく為の第一歩だぞ」
方向の先は――フレイア本拠地。
即ち、本陣に帰還中なのだ。
レイルはT−900に、この事を彼女自身で判断してほしかったのだ。
離れていくレイルの背中を無言で見つめるT−900。
一定の距離を置きつつ、T−900はレイルの後を歩き出す。
(“人間に近づく”………どうしてレイルは…私を人間にしようとする?)
抱いた事の無い疑問が、機械の脳裏に広がる。
どんなに頑張っても人間にはなれない。
自分でも、それは理解している。
なのに、何故レイルはそれにこだわるのか――。
彼女は結局、本拠地に着くまでレイルに問い質す事は出来なかった――。
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 1 作家名:神威