魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 1
二人が行き着いた場所は、一人の兵士の前。
その兵士はマシンガンを携え、窓際に立ち、凛とした表情で外を見つめていた。
「T−900、話がある」
レイルが口にした彼女の『型名(なまえ)』。
彼女を呼ぶには、その『型名(なまえ)』しか無い。
ターミネーターに、『名前』など無い。
「何でしょうか?」
金髪のポニーテールを揺らしながら、T−900はレイルの方を振り向く。
「今回のミーティング、お前にも同伴してもらう。防衛隊隊長からの命令だ」
「私が…?」
「貴女が呼ばれたその意味……分かるわよね?」
「………」
思考を巡らさずとも、彼女に当てはまる最重要事項は一つしかない。
『スカイネット』
周りは彼女を特別扱いせず、一人の兵士として接している。それ故、ミーティングで指名される事は殆ど無い。
だが、今回は違うようだ。
スカイネットの欠点を知りたいのだろうか、はたまた作戦に自分を利用するのか。
そのような幾つかの疑問が、T−900の脳裏に内在していた。
「……了解しました。私は貴方達Peaceの所有物。この身、いかようにお使いください」
眼前のレイルに敬礼をしながら、T−900は言った。
「“所有物”……ね…」
「………」
余程不愉快だったのだろうか、その単語を聞いたレイルの表情はいつにも増して険しかった。
「T−900、お前は俺達の仲間だ。“所有物”じゃない。二度とその言葉を口にするな」
「はい。申し訳ありません、レイル」
「行くぞ」
詰所の出入口へと歩き出すレイル。
その後ろ姿を、二人は追従しながら見つめる。
「どうやら、彼を不快にさせてしまったようだ」
「そうね。言葉は選ばなきゃ駄目よ」
「私は正論を述べただけなのですが…」
「正論には違いないけど、隊長が仰った事は間違いじゃないわ」
そう言うと、ミレーユは彼女の前に立ち止まり振り向く。
「貴女はPeaceの一員……仲間よ。外見が人間なんだから、そこは自覚しなさい」
「………」
彼女一人を残し、ネイビー色のストレートポニーを揺らしながら、ミレーユは早足でレイルの近くへと向かっていった。
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 1 作家名:神威