魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 1
ジャケットの内ポケットから煙草を取り出したガリエルは、煙草をくわえ火を点けようとする。
だが、煙草に火は点く事は無かった。
気付けば煙草の葉の部分が無いのだ。
ガリエルの眼前に見えたのは、一本の刀の切先。
それによって煙草が切断された事を知るのに、時間はいらなかった。
その所有者が誰なのかも――。
「此処は禁煙だ、ガリエル」
長い黒髪を一つに束ねた男が、刀を構え、そういった。
「アーチェス小隊長!?」
ロッジが彼の名を叫んだ途端、周囲はざわつき彼らに注目する。
野次馬のように飛び交う小声が、ルーム内に響く。
「やっとお出ましか、負け犬さん」
「聞こえなかったのか?禁煙だと言っている」
「へいへい、分かりましたよ…ぷっ!」
口にくわえていた煙草を、ガリエルはクレイヴの顔面めがけて吹き出した。
クレイヴの顔面に当たったその煙草は、彼の足下にゆっくりと落ちていった。
「拾えよ負け犬!…あっ!…今また助けてもらえばいいじゃねーか、あのマシーンによ!」
「隊長!口が過ぎます!」
笑い続けるガリエルを尻目に、クレイヴは刀を鞘に収め落ちた煙草を拾う。
「た、隊長……」
心配そうに見つめるクレイヴの男性補佐官ではあったが、クレイヴの表情は意外にも穏やかであった。
「確かに俺は負け犬だ。レイルにも迷惑をかけた。……俺は…彼女に感謝している。彼女が居なければ、俺や部下達は今日を迎えられなかった…」
「“彼女”!?……おいおい、あいつはターミネーターだ!人扱いしてんじゃねぇ!」
「………ガリエル……そんなに彼女が怖いか?」
クレイヴの一言を聞いた瞬間、ガリエルは眉間にシワを寄せ怒りを露わにする。
「……ぁあ!?」
「お前は彼女を余り良く思っていないようだが、それは……恐れから出ているのか?」
「てめぇ……喧嘩売ってんのか?」
刹那、周囲のざわつきが最高潮に達する。
その理由はただ一つ――。
ガリエルが咄嗟に取り出した片手銃――その銃口が、クレイヴに向けられていたからだ。
「隊長、何を……!?」
「てめぇはすっこんでろ!!ロッジ!!」
「………」
「おいクレイヴ……言って良い事と悪い事がある……。この俺が“奴を恐れてる”だと…!?ふざけんじゃねぇ!!マシーンを恐れてたら戦争なんて出来ねぇだろうが!!」
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 1 作家名:神威