魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 2
「大丈夫。もう一人の子……グレース=レイヴンさんも処置は済んでる。確か、この階の突き当たりの病室にいるわ」
「良かった…」
「“レイヴン”?シャマル、まさかその患者は…?」
「そうよ。彼女はハリー中将の娘さんよ」
『ハリー=レイヴン』――地上本部に属する中将である。一年前の事件で亡くなったレジアス=ゲイズ中将の後任として、六課解散後彼が選ばれた。市民の支持も厚く、本局からも期待されている。
「病室にいらっしゃるわ。それと、ティアナもいたわね」
「私行って来ます。グレースちゃんの事も心配ですし…」
「分かったわ。こっちはまかせて」
「はい。じゃあね、フェイトちゃん。また後で」
「うん」
フェイトに手を振り、皆に見送られなのはは病室を後にした。
「んっ?」
シャマルが何かに目を合わせる。
それは、なのはが落としたじょうろだった。
「あらら、びしょ濡れじゃない?さてはなのはちゃん、驚いて落としちゃったのかしら?」
せっせと片付けを始めるシャマルを見て、フェイトは図星と知り小さく笑い出す。
「笑える元気があるなら、心配する必要は無いな」
バスケットを棚の上に置き、シグナムは近くの椅子に座る。
「主はやてからだ。今日はどうしても抜け出せない用事があると仰っていたからな」
「はやてから?ありがとうって伝えてくれます?」
「自分でしろ。良くなってからな。主はやてもそれの方が喜ばれるだろう」
「…そうですね」
シグナムは棚の中から小皿と果物ナイフを取り出し、バスケットから林檎を掴んだ。
「シグナム?」
「おかしな事ではない。林檎を切るんだ」
「そ、そうですが…?」
「見くびるなよテスタロッサ。主はやてと特訓した成果…見せてやろう」
林檎の皮剥きを始める。以外と上手く、綺麗なバネを描いている。
片付け終わったシャマルは、その光景を見て微笑む。
フェイトはじっと見つめている。
「そんなに手強かったのか?奴は…?」
「えっ……?」
不意に話し掛けられたからか、内容に驚いたからか。どちらにせよ、両方当てはまっているだろう。
「クラウス=イェーガー……名前くらいは知っている。お前程の強者を倒した奴は、本当に強かったのか?」
「………」
一瞬の沈黙。シャマルもまた、黙って話を聞いていた。
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 2 作家名:神威