魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 2
人前ではおろか、自分から涙を見せないシグナムが流す涙の意味――。
相手を思いやる心。
苦しみを分かち合う心。
純粋に、心配する心。
その全てが詰まった涙は――決して軽い物ではない。
フェイトの涙が引き金となり、蓄積していた感情が爆発し、“涙を流す”という結果となった。
シグナムの膝上は、涙が零れぽつぽつと濡れていた。
「シグナム……顔を上げて下さい…」
フェイトの言葉に従い、ゆっくりと顔を上げる。シグナムの目には涙が溢れていた。
「貴女が涙を流す程私を心配してくれた事……凄く嬉しいです。私は…自分の力を過大評価していたのかもしれません。相手を見下し、プライド任せで挑んでいた。そして負けて悔し涙……自分勝手もいいとこですね」
「テスタロッサ……」
「ありがとうございます。この心……必ずクラウスにぶつけます!」
涙を溜めながらも、フェイトの表情は何時も見せる明るい笑顔へと戻っていた。
「テスタロッサちゃん……」
「ぐすっ……すまない。柄に似合わず、涙を流してしまった…」
「女の子は、涙を流してもいいんですよ?」
「ふっ…調子の良い事を…」
フェイトの両肩から手を放し、シグナムは涙を拭う。
「さて、皮剥きが途中だったな。再開するとしよう」
小皿と果物ナイフを取り出し、林檎の皮剥きを再開する。
「手を切らないようにね」
「お前じゃないから心配する事は無い」
「ちょっと!?それどう言う意味よ!?」
むっとした表情で、シャマルはシグナムに詰め寄る。
「毎日台所で“痛い痛い”と泣いていたのは、あれは芝居だったのか?」
からかい口調でシグナムが言う。
「失礼しちゃうわ!!私だって林檎の皮剥きぐらい出来るもん!!」
シグナムから林檎と果物ナイフを奪い、皮剥きを始める。
「見てなさい!!」
「あわわ……シャマル先生…!」
「精々林檎を“元の色”に戻すなよ?」
和やかな雰囲気が病室を彩る――。
そこに最早、暗い色は存在しない――。
フェイトの病室と同階の突き当たりの病室。
部屋の前には――『グレース=レイヴン様』と名札が表示されていた。
病室の構造は、突き当たりの為フェイトの病室と真逆の作りとなっている。
即ち、ベッドの左側に扉があるのだ。
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 2 作家名:神威