魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 2
一言言った後、ティアナは病室を発った。
次にシャマル、最後になのはが“じゃあね”と足して、病室を後にした。
室内は急に静かになり、グレースの吐息だけが聞こえる。
グレースは溜息を一つ、吐いた。
「我慢…出来た…。もう……限界…だ…」
布団に零れる一粒の雫――。
次第に数は多くなり、雫――いや、涙は溢れていく。
「うっ…うぅっ…ひくっ…」
グレースは俯き、泣いていた。
「…ジェミニ……」
グレースが呟いた誰かの名前。
特定は出来ないが、彼女にとって大切な人の名前のようだ。
病室には、彼女の泣き声が寂しく木霊し続けていた――。
3日後の夜。
無事に退院したフェイトとグレースは、なのはと小さな女の子――ヴィヴィオと一緒に、ある人物の家に向かって歩いていた。
ヴィヴィオは白のワンピースに茶のコートを羽織り、右手にフェイト、左手になのはの手を握り、とてとてと歩を進めていた。
ヴィヴィオ以外が管理局の制服を着ているのには訳があって、なのは達の家のヘルパーであるアイナ=トライトンが彼女を仕事場に連れて来た為、仕事帰りのままの格好となったのだ。
以前から計画していたのだが、如何せん忙しく、ヴィヴィオが待ち望んでいたので先延ばしする訳にはいかなかった。
なので、このような状況となった。
「はやてさんのおうち、まだかなー?」
うきうきと楽しい表情を浮かべ、ヴィヴィオは言った。
彼女の言葉通り、向かっている場所は八神はやての邸宅である。アポ無しの為、サプライズの計画だ。
「もうそろそろじゃないかな?私も楽しみだなー?」
フェイトの隣に位置するグレースが、ヴィヴィオを覗き込むように返事した。
互いに目が合い、笑顔を見せ合う。
「グレースのショコラケーキ、喜んでくれると良いね?」
「ママと作り上げた最高傑作よ!喜ぶに決まってるわ!」
「そうだね」
フェイトが話題にしたショコラケーキ。
退院後にも関わらず、グレースは無茶を言って母であるエイシスと一緒に作り上げた。
ボックスごと白の紙袋に入れ、出勤時に持って来ていた。
「グレースちゃんのショコラケーキ、美味しいからね」
「ヴィヴィオも好きーっ!」
なのはの後、意気揚々とヴィヴィオが言った。
「ありがと!でもなのはちゃんも持って来たんでしょ?」
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 2 作家名:神威