魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 2
そして一匹――いや、一人と称した方が良いか。
薄青で白混じりの毛並みをした狼――ヴォルケンリッターの守護獣で同じく家族の一員の、ザフィーラも顔を出していた。
ザフィーラが視界に入った突如、グレースは紙袋をはやてにそそくさと渡し、瞳をきらきらと輝かせ彼に向かって走り出した。
「お、おい…!?」
ザフィーラの声も虚しく、グレースは飛び込むように彼に抱きついた。
「ザフィーラだーっ!!可愛いーっ!!」
「グレース!?」
ヴィータの驚きを目もくれず、グレースは自身の頬をザフィーラの頬に擦り付ける。
《グ、グレース!?ヴィヴィオは私が喋れるのは知らないんだぞ!?》
《名前だけ呼んだから大丈夫だもーん!!》
念話で話しながらもグレースは同じ行動を取る。
「退院していきなりこれかよ!?そこはアタシ専用だ!!」
「じゃあ一緒にやる?」
「………」
頬を紅潮させて迷うヴィータだったが、やがて提案に乗り、ゆっくりと横になりザフィーラの片頬に顔を寄せた。
「両手に華だね、ザフィーラ?」
「………」
既に疲れた表情を見せるザフィーラに追い打ちを掛けるように、彼の目に新たな一悶着の根源が映る。
「ヴィヴィオも遊ぶーっ!!」
ヴィヴィオがザフィーラに向かって走って来たのだ。
結果、ヴィヴィオが馬乗り、両頬にはグレースとヴィータの顔と、ザフィーラは抵抗するのを諦め溜息を一つ吐いた。
「グレースちゃん…ヴィータちゃん…ヴィヴィオ…」
「ザフィーラ、今日は人気者さんやなー」
なのはが苦笑いを浮かべるのに対し、はやては笑顔でその光景を見つめていた。
その顔に――最早涙は無い。
「グレース、ヴィヴィオ、ヴィータ……ザフィーラで遊んじゃ駄目」
「えーーっ!?」
3人合わせて文句を言う。特にグレースが強く反発していて、表情も子供のようである。
「文句を言わない」
フェイトの優しい顔に負け、渋々3人はザフィーラから離れた。
そこに、妖精のように小さくスカイブルーの髪をポニーテールに束ねた女の子が浮かんで向かって来た。
白を基調とした清楚な格好は、彼女にとても似合っている。
「あっ、グレースさん!」
「リイン、久しぶり!」
融合騎――ユニゾンデバイスであるリインフォースII(ツヴァイ)、通称リインがグレースの頭に伸し掛かった。
「退院おめでとうございますです!」
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 2 作家名:神威