愛してるよ アル。 (『vivi』パロディー)
最後に、手紙を書くことにした。
唯一素直になれる魔法の贈り物。
「何…書けばいいか…」
ペンを手に取り只管悩む。
昔の事、今までの事。
殆どが自分にとって、美しくて素敵な思い出である。
独立されたことはさておき、アメリカにとっても素敵な思い出であるかはわからない。
自分が勝手に言っているだけで、全く違うかもしれない。
一文字も書けないまま時間は過ぎていく。
頭を抱えて考えるけど、一つも書くことなんてなかった。
でもどうにかこの気持ちをアイツに伝えたい。
時は止まらない。
今のこの時間でさえ、勿体無く感じてくる。
小さい頃も会えない日々が続いて。
俺は一人泣くアイツを置き去りにし母国へ出航する。
後悔した。
アイツとの残りの時間が愛おしくて、虚しくて。
ふと気付くと、自然と足が動きだしていた。
顔が見たい。
何を言われたって良い。
ぽろぽろと溢れだしてしまう雫を袖で拭い。
足を動かす。
少しだけでも、
一緒に居たい。
「アルフレッド」
ボロボロの愛しい人。
急に名前を呼ばれて戸惑ったのか、動揺が見えた。
向けられる笑顔が切なくて胸が痛い。
「昨日お別れしたじゃないか」
また戻って来ちゃったの?と、首をかしげる。
消えると解っていても、今まで通り。
有りのままの彼。
アメリカの手を掴んだ自分の手に自然と力が籠る。
少し顔を歪めたアメリカを見て手を離してしまった。
「明日になったら…な、今日の俺たちは死んでしまうんだ。」
「…頭でも打ったのかい。」
ワケの解らない事を言っている事は解ってた。
言いかけた言葉を飲み込み、笑顔をつくる。
「やっぱなんでもねぇ」
アメリカの頭の上にはクエスチョンマークが浮いているに違いない。
彼の頭を軽く撫でてやると、何時ものように振り払いはせず。
「気がすんだら止めてくれよ」
そう一言だけ言い放った。
作品名:愛してるよ アル。 (『vivi』パロディー) 作家名:君空