魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 3
そこを見ると、うつ伏せのまま右腕で握るT‐900の姿があった。
だが敵は容赦なく右足を大きく振り、彼女ごと壁に叩きつけた。
壁の表面は崩れ形を無くし、瓦礫と共にT‐900は床に落ちる。
相手の状態を顧みず、敵はエレベーターに向かって歩き入口に到達した。
暗闇の底から流れる生温い風が、今後の結末を示唆しているようだった。
それを見つめる瞳もまた、酷くくすんでいた。
吊るされているケーブルを掴み、ぶら下がったまま片腕で体勢を整える。
そして入口の四つ角を確認するや、視界を赤くし検索を始めた。
検索結果は『WEB PLASMA CANNON』――
『ウェブプラズマ砲(蜘蛛の巣型)』。
更にその設計図が3D表示され、『ENTER』――『確定』となった。
刹那に右腕が機械音を鳴らして変形し、蜘蛛の脚に似た8つの突起が付いた砲口へと変貌した。
8つの『脚』の先端からプラズマ弾が撃たれると、開口の四角四側面に着弾、ビームとなって中央に集まり蜘蛛の巣状に展開した。
個体として残せる為、半永久的に持続出来るのだ。
それを確認し、ケーブルを握る腕を緩め滑るように暗闇の地下へと消えた。
T‐900はまだ、立ち上がらない――。
◇
艦船クラウディアは予定通り、呂琥海の世界区域へと突入した。
宇宙空間にある惑星呂琥海は、一言で言うと『蒼穹』。
見る者全てを魅了させるそれは、犯罪と無縁の場所であると印象づける。
だが今、安寧の地にて闇が蠢く。
次元犯罪者クラウス=イェーガーが、虎視眈々と画策を巡らす。
それを事前阻止及び逮捕する事が、今回の目的だ。
艦内の意気は、最高潮を維持し惑星へと向かう。
その艦の一室に、ティアナとグレースがいた。
カチカチとデバイスを調整したり空間モニターを操作したりと、各々準備を進めていた。
ふと窓際に立つティアナの目に、呂琥海が映る。
複数の惑星の中で蒼く煌めく呂琥海は、美しく、心を癒す。
「綺麗ですね、呂琥海って…」
「…そうね。ティアナちゃんは来たのは初めて?」
「はい、スバ……友達と行ってみたいって話した程度で…」
「綺麗な所よ。嫌な事なんかすぐに忘れるくらいに…ね」
「………」
ティアナの側に近づくグレースも、窓の向こうに見える呂琥海を見据える。
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 3 作家名:神威