魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 3
「フェイト執務官、もうすぐ呂琥海近郊の次元空間に到達する。準備をしておけ」
「了解しました」
義兄弟(きょうだい)とは言え、立場は上官と部下。
当たり前の事だが、子供の時のような接し方では良くないのだ。
「みんな、現場は近い。改めてデバイスのチェックを…」
フェイトの言葉は、不意に切られた。
艦内に鳴り響く警告音によって――。
空間モニターには『ALERT』と赤く表示されていた。
「何事だ!?」
「第81管理世界呂琥海近郊の次元空間、座標810712にて次元震が発生!15秒後に余波が本艦に接触します!」
シャリオがモニターを見つめながら、叫ぶように言った。
「次元震だと…!?こんな時に…!!……艦内全乗員に告ぐ!!近郊にて次元震が発生した!!カウントはシャリオ=フィニーノ執務官補に一任!!衝撃に備えよ!!」
艦内全域に通信を送る。それを聞いた乗員達の顔は、驚愕と恐怖が入り交じった表情をしていた。
「接触まで……10……9……8……7……6……」
カウントダウンが始まり、衝撃が迫る。
「……5……4……3……2……」
フェイトの頬に、一筋を描くように汗が零れ落ちる。
周りの空気が、比例して嫌に重く感じていた。
そして――『それ』は襲い掛かる。
「……1……衝撃、来ます!」
刹那、艦船を大きく揺らす衝撃が起きる。
しかし、他の次元震と比較すると大幅に規模が異なっていた。
何かに掴まらなければ、立つ事もままならないのだ。
「キャアァァァァ…ッ…!!」
女性局員達の叫び声が重なり合い、轟く。
「皆、収まるまで耐えるんだ!!」
艦長席の腕掛けを握り締め、クロノは指示を出す。
長く続く揺れ。
強い揺れに、不意にティアナの体勢が崩れた。
「あっ…!?」
「Sir…!!」
異変に気付き、クロスミラージュは主を呼ぶ。
しかし彼女の身体は、倒れる事はなかった。
彼女を押さえていた腕が――あった。
グレースの腕だ。
「大丈夫?」
「……グレースさん!…すみません」
グレースの手を借りて、体勢を戻す。
「解析完了!5.5秒で収まります!」
後、シャリオの解析通りに揺れは完全停止した。
刹那の出来事に時が止まる錯覚を覚える。
それは、『次元震』という災害を目の当たりにした人間の――当然の反応なのかもしれない。
「総員、怪我はないか?」
「異常なし」
「作業に支障ありません」
各局員の報告が空間モニターに疎らに表示される。
作品名:魔法少女リリカルなのは THE MACHINES WAR 3 作家名:神威