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モン・トレゾール -私の宝物-

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「あ――、生き返るよ。なんて美味しいのだろうね、このスープは」
「有り合わせの野菜を細切れにしてコンソメの素を入れて作った安上がりな、だ〜〜れでも出来るものですよ〜っだ」

ワンルームの部屋に、全く似つかわしくない男が、小さくて古びた椅子に腰掛け、傷だらけのテーブルの上に乗せられた雑穀パンとスープを幸せそうに口に運んでいるのは、何だか非常にとんでもなくミスマッチだった。

「いやいや。私は今日の昼前位からあの公園に行き倒れていたと思うのだが、こうして声をかけて食事と宿を与えてくれたのは君だけだ。その優しさがこのスープに滲み出ているのだよ」
男はニッコリと極上の笑みをアムロへと向けた。

“ウッワ〜〜。この人、タラシだわ”

アムロはついつい胡散臭いものを見る目つきになってしまった。

「ん?どうかしたのかな?」
男が軽く首を傾けてアムロを見詰めた。
「別に!怪しさ全快だなぁって思っただけ」
「怪しさって?…そうだ。君の名前を聞いていなかったね。なんと言われるのかな?」
「あのねっ。人に名前を尋ねる時は、まず自分からってマナーじゃない?」
アムロは手にしていたバターナイフを男に向けて指し示した。
「これは失礼。とは言え、君も私の事を言えないのではないかと考察するが?」
男は苦笑いしながらも、バターナイフを持つアムロの手を恭しく掴むと、口付けせんばかりに引き寄せた。

「私はシャ……、クワトロ・バジーナと言う。で、君は?」
「手…、離してってばっ!アムロ!アムロ・レイ!!」

アムロは掴まれた手を懸命に引き剥がそうと振り回しながら名前を告げた。
だが、男はアムロの手を離すどころか、更に引き寄せると、手の甲へと唇を落とした。
そして上目使いにアムロを見詰める。
「アムロ、か。君は日系?」
「どうだろ…。って言うより、手を離しなさいってばっ」

むかっ腹の立ったアムロは、テーブルの下で男の - クワトロ-の脛を思いっきり蹴った。
「っつ!」
クワトロが繰り出された蹴りに、つい手を離した。
「意外と凶暴なんだね、アムロ」
蹴られた脛を擦りながらクワトロが言ってくるが、アムロは馬耳東風の観。
「貴方こそ、胡散臭ささが大爆発だけど?クワトロって、イタリア系には見えないのだけど?!」
アムロはしてやったりとほくそ笑んだが、携帶電話のアラーム音にビクッっとした後、慌てて立ち上がった。

「ま、この際どうでもいいわ。私は今からバイトに行かなきゃならないの。食事が終わったら食器を流しに入れておいてちょうだい。で、スペアキーを渡しておくから、帰る時に鍵をかけたら、扉の下から室内に滑り込ませておいて。じゃあね。さようなら。ごきげんよう」
アムロは一方的にまくし立てると、先ほどまで引っ掛けていたショルダーバッグを再び掴むと、男の返事を待たずにアパートを飛び出して行ったのだった。