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モン・トレゾール -私の宝物-

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「そもそも、何で貴方、帰ってないのよ。昨日帰れって言ったはずだよね、私」

寝起きで盛大に跳ね回っていた紅茶色の髪の毛を何とか纏めると、アムロはクワトロを昨日同様、椅子に座らせると問い詰めた。
テーブルの上には昨夜ミライから貰った料理が置かれている。
その料理を見詰めたまま、クワトロが見当外れな返事を返してきた。

「これ、食べないのかね?美味しそうなんだが」
と指差してアムロを振り仰ぐ。

「食べるわよ!その為にミライさんがくれたんだから…って、そうじゃなくてっ!」
「なら温めて食べよう。私もお腹が空いた。いつもは朝食など口にしないのだが、今日は何だか食べたくて堪らないのだ。温めてくれ、アムロ」
クワトロはアムロの怒りなど、どこ吹く風といなす。

アムロは呆れ果てて大きな溜息をつくと、パックに入っていた料理を、電子レンジで温めるものは皿に移し、フライパンで温めるものはそちらに移して火にかける。
その後姿を、クワトロは嬉しそうに眺めていた。

「私の分しかないわよ」
「え〜?そんな非道な事を言わないで、私にも食べさせてくれ」
「貴方なら外で幾らでも高級な物を食べられるでしょう?その身なりなんだから」
「昨日も言ったと思うのだが、現金の持ち合わせは無いのだよ」
「はぁ?」
アムロはサラダを作ろうと持ったナイフを片手に振り返った。すると、クワトロの指には黒いカードが挟まれていた。

「これならあるのだがね」
「ええぇ〜〜?!ったっ!」
始めてみるブラックカードに驚くあまり、アムロは指先をナイフの先で傷付けてしまう。途端にプックリと赤い粒が指先に溜まった。

「ドジっちゃった〜」
血を洗い流そうとしたアムロの手は、後ろから差し出された手によって阻まれ、アムロの指はクワトロの口の中へと収まってしまう。
ぬるりと血を舐め取る舌の動きに、アムロの背筋がゾワリと震えた。

「やだっ!」

アムロはもがいたが、クワトロが背後から身体を抱え込んでいる為逃げようが無い。
全身を緊張させてアムロはクワトロが離してくれるのを只管待った。

それがどれ程の時間だったのか判らないが、アムロが頭に昇った血のせいでクラリとするまで続いたのだった。