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君を守る

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六章



「と、いうわけで、僕は桜さんをこうして毎日送り届けている。
 あの日彼女は恐怖に耐えかねて僕に声を掛けたんだ。」
椿は一息つくとティーカップを口に寄せた。
「なんや、そうゆう事やったんかいな。」
つまらなさそうに姫子が言う。
「やっぱりなぁ!なーんかおかしいと思ったんだよ。
 俺より先に椿に彼女ができるなんて。」
ボッスンはようやく安心したらしい。
ソファーの上で胡坐をかいてガハガハ笑っている。
それを聞いた椿はピクリと眉を寄せた。
「なんだ、それは。聞きづてならないな。
 どうして貴様より先に僕に恋人が出来たらおかしいんだ。
 どう考えても、僕のほうが貴様より優れている。
 恋人ができるのも時間の問題だろう。」
と、妙に上から目線で椿はボッスンに言い放った。
「なにおう!!馬鹿言うんじゃねーよ!
 俺様のほうが何十倍もいい男だろうが!
 この下まつ毛が!!!」
「何を言う!貴様より数百倍僕のほうが男前だ!!!!」
二人が子供の様に言い争っていると、「クスクスクス」と桜が笑う。
「恥ずかしい奴らやな~。」
姫子が呆れたようにため息を着く。
「双子なんだから対して顔のつくりは違わないだろう。」
と、スイッチが的確な突っ込みを入れた。
「まぁまぁまぁ、本題に入ろうぜ、椿。」
安形がにらみ合っているボッスンと椿の間を割って入り桜のほうに向きなおる。
「このことは警察には?ストーカーは立派な犯罪だろう。」
厳しい口調で問うと、桜はハッとしたようにまた暗い表情へ戻る。
「親には知られたくないんです・・・。」
今にも消え入りそうな声で桜は答えた。
そのまま俯いてしまう。
「桜さんは今この家で一人暮らしなんです。
 ご両親は海外に単身赴任されていて、心配を掛けると、海外に連れて行かれるらしいんです。
 桜さんは今の仕事が好きで、ここを離れたくないんです。」
桜の様子を見かねて、椿が事情を説明する。
「ほほう、そりゃ椿にも都合が悪いな。」
「え?」
安形のつぶやきに桜は顔を上げた。
「会長!!!余計なことを言わないでください!」
椿が顔を真っ赤にして安形に食って掛かる。
ニヤニヤしている安形をしり目に今度はボッスンが口を開いた。
「桜さんを守ってるのはいいんだけどよ~、このままじゃ埒があかねーだろ?
 さっさとそいつを捕まえちまおうぜ。
 んで、二度とそんな悪さができないよう俺らで何とかしねーと・・・」
「いや」
ボッスンが言い終わる前に椿が遮った。
「桜さんは僕が守る。ずっと送っていれば相手も手が出せないだろう。」
自分に言い聞かせるように椿は言う。
が、それを聞いたボッスンは眉をひそめた。
「んなこと言ったって、それじゃ解決には何ねーだろーが!
 ストーカーがあきらめるまで待つのかよ?」
「いつかはあきらめるだろう。」
「いつだよ。いつになったらあきらめるっていうんだよ。」
「いつかはいつかだ。それまでは僕がずっとそばにいる。」
不毛な押し問答が続く。
『こりゃ、椿のやつ意地になってるな。気持ちは分かるが・・・。
 このままじゃ、椿は本当に桜さんを付きっ切りで護衛しかねんな。
 そうなると生徒会への出席率が悪くなり、俺への余計な仕事が増える。めんどくせー、何とかしねーと。』
安形の頭の中で自分本位な思考が駆け巡った。
そして、密かにニヤリと笑う。何か思いついたらしい。
「なぁ、椿。この写真を見ろ。
 これはお前が桜さんを送っている所を撮影したものだな。」
「ええ。」
「そして、写真はこの通りぼろぼろに切り裂かれている。
 これはつまり、桜さんと仲良くしているお前が目障りってことだ。
 奴はターゲットをお前に変更したんじゃないのか?」
安形がまっすぐと椿を見据える。
自然と全員の視線が椿に注がれた。
「ちょ、ちょっと待ってください!それは本当ですか?」
突然桜が立ち上がる。
「私の代わりに椿君が危険だということですか?」
必死な形相で安形に詰め寄る。
「い、いや。あくまで仮定の話だ。もしかしたらそういう事かもしれないという仮定の・・・。」
「僕は構いません!桜さんを守れるなら!!」
「だめです、そんなの。絶対だめです!!」
先ほどまで意気消沈していた桜だが、今度は黙っていない。
「ちょーっとまて!!!だ・か・ら!!!
 こうしよう。」
コホンと咳払いして、
「桜さんは今まで通り椿が守る。」
安形が椿に視線を送ると、椿はコクリと頷く。
「そして、椿はスケット団!お前らが守れ!!!」
そう言うと、今度はスケット団三人のほうに視線を送った。
「えーっと?つまり~、桜さんを守る椿をうちらで護衛するっちゅー、そーいう事か!」
ポンっと姫子は両手を打った。
「なるほど、それなら椿を護衛しながら、ストーカーの素性も分かるかもしれないな。」
スイッチは納得したようだ。
「藤崎もそれでいいな。依頼内容の変更だ。」
「しかし会長!!」
言いたげに椿が訴えるが、
「椿、これは会長命令だ。」
と静かに、ゆっくりと諭すように言った。
「はい・・・。」
椿はあきらめたように承諾する。
それを見たボッスンは、紅茶を一気に飲み干し、ティーカップを勢いよく置く。
写真を手に取り、姫子とスイッチに向きなおると、すうっと息をすった。
そして二人に言い放つ。
「んじゃ、ごちゃごちゃと回りくどい気もするが、しゃーねーか。
 スイッチは奴の情報をできるだけ集めてくれ。
 姫子、何があるかわからねぇ。薫風丸の手入れをしておけよ。
 よーっし!今度こそ、任務開始だ!」
その時写真から何かが剥がれ落ちるのをボッスンは見た。
それは枯れ始めた花びらだった。

作品名:君を守る 作家名:nanao