Plam5
MA・DA・O
唐突だが。ダメ人間を見たことはあるだろうか。この機会にぜひ人生振り返って答えを見つけてほしい。
忘れたかもしれない。逆に生々しく覚えているかもしれない。こいつなのか微妙なとこもあるかな。はい、ありがとう。答えは、言わなくていい。
じゃあ、なぜあいつがこいつがダメになったのか考えたことはあるかな。
もあっとした質問で申し訳ない。いったいなんなんだよって言われると、ゴメン。意味はない。意味はないんだ。訂正、まだオレにもわからない。この質問で、いったい何がしたいんだろうねオレは。あなたがおもい浮かべた人と自分を比べたいのかな。どうなんだろう。どっちにしろたいした質問じゃないよ。答えなかったから地球が真っ二つになるようなもんじゃない。いや案外なったりして。オレの周りはね、下らないこというと爆発したり黒焦げにしたり鞭攻めしたり殴り蹴り咬み殺したり射殺したりするから。いやになっちゃうよね。毎日が黒髭君危機一髪。知ってる黒髭君?ああ。ねえ。
もう一個訊いとく。うん一番まとも。ねえ。
言うべきだった言葉、詰まらせてないかい。
夏を引きずる秋。などというものはイタリアにはない。あと半月。半月もすれば肌をさす日差しが冷気を伴う。だから日本の秋は、懐かしい。
「いや単に和食が懐かしいだけかもなあ」
「食事中はしゃべるな」
オレは、十年後の秋の並盛の食堂で雲雀恭弥とご飯を食べる。
まるで伝言ゲーム。並盛出身者と伝言ゲームする際は風紀委員を入れてみて。反応楽しいから。だってゲームだってずいぶんと背筋が凍る。
それが現実だって言うんだから、いろいろあはははーです。もちろんこれは歴としたお仕事。接待というやつ。とはいえ接待人数は上限1名様まで。ははは。本当、よく草壁さんとか生きてこれたよな。
何はともあれ。接待してあげるというお言葉に甘え、オレはしょうが焼き定食。ひばりさんは豚角煮丼と焼き魚というボリューム。久々の醤油に天国を見たねオレは。ビバ出汁。いやもう男は胃袋さえがっちり抑えときゃ本当に離れないかも。もちろん下半身は重要だよってサイテー発言もぶちかましとく。サイテーサイテー。オレは、骨の髄まで、おっさんになりました。
「あー…ビール飲みたい…」
「真っ昼間からみっともない」
「ダメオヤジですもん」
「へえ隠し子いるの」
「うちはねえ…ほんとみんな揃いも揃って独身で、もう社交界の噂に貢献してますよ」
「山本武も、離婚したしね」
しゃべるなと言ったくせに、ずいぶんと饒舌な先輩に苦笑。というかあんた、一個人の戸籍にまつわるあれこれに興味あったのか。まあ、山本は未だ並盛にいるから、耳に届いたのかなあ。しかし、旨い。
「あー…奥さん美人でしたよねええー。一回会いましたが、割烹着似合ってて。つーか、離婚じゃなく別居です。まあ人生色々ですよ」
「悔しいかい」
千切りキャベツのフレッシュさと肉の旨味が程よくマッチ。ほっぺた落ちちゃうよ。
「なあにが」
実際落ちたらゾンビだけどさ。
ヒバリさんが箸をおいて手を突き身を乗り出す。まるで台本に書かれていたかのよう。美しく動いてオレの耳元に声を落とした。
「奪えよ、沢田」
その言葉にオレはとうとう吹き出した。爆笑だ。なんてまあなんてまあ。しられているとはおもっていたが!
なんて、熱いことを言うのか。残念だ。だって。だってヒバリさん。
オレはダメなやつだから、ずっと熱くなんて、いられないんです。
ただ。
言うべきだったと思う。言葉が、あるだけ。
雲雀→沢田→←山本話