望んだ先には
第二章 想い
奴を倒せば・・・俺達の街が戻ってくる・・!
仮面の奥深くにあるであろう瞳を睨み付けるように 鋭い眼差しを向けた
オスマン帝国は無言で腰に下げていた剣を抜き放つ
黄金の柄に様々な宝石で装飾された剣だった
弧を描いた美しい刀身が辺りの風景を写す
俺の方へ切っ先を向け
「・・・かかってきな!」
そう言い放った
力強く地を蹴り 飛ぶように駆け抜ける
「うおおおおおおおお!」
咆哮を上げ奴に襲い掛かる 剣を振り上げ 振り下ろした
キイィン――――剣同士がぶつかる音が響く
オスマン帝国の顔が目の前にある
今こうして近くで見て 初めて仮面の奥の瞳が見えた
エメラルド――
俺は一番初めにそう思った
全身を電流のようなものが流れる
脳味噌が正常に働かない
何だコ・・・レ・・・・?
ついには視界までもがぼやけ始めた
目の前が緑に染まる―――
頬右に走る激痛で現実に戻された
吹っ飛ぶ体
地に叩きつけられる
「う・・・」
俺の意識が変なとこに飛ばされていた間に蹴り飛ばされたらしい 頬がジンジンと痛む
「なぁ〜にぼぉっしてやがる 死ぬぜ・・・?」
怪我など負っていないかのように余裕そうに言い放つと来いとばかりに挑発する
俺は首を振りさっきの出来事を忘れ立ち上がった 口の中が切れ血が滴る
そして 再度向かう
剣ではいくら攻撃しても防がれたり避けられる
ならば――
蹴りや足払い自分が出来る限りの体術を繰り出した がどれもかわされてしまった風に舞う木の葉のように
「はぁ・・はぁっ・・・」
肩で息をする 俺だけが疲れているようだ
「もうお終めぇかい?」
奴は拍子抜けしたように言うとこちらに向かって走ってきた
身構えようと剣に力を込めるが吹き飛ばされてしまう
今度は自分が馬乗りにされる番だった
振り上げられた剣
太陽の逆行を浴びてとても神々しかった
「あばよ」
振り下ろされる剣 思わず目を閉じる
その時
「アルム!!!!」
デルタの叫び声がした
目を開けると剣の切っ先が喉元すれすれで止まっていた
奴は・・・オスマン帝国は俺ではなく横を向き 離れた場所の兵士達の方を向いている
俺も向く
目を見開いた
そこには――
兵士に腕を拘束されたデルタがいた
体中ボロボロにして 鼻血まで出して
突然デルタは暴れだすと腕を拘束していた兵士から逃れた
すると懐から短剣を取り出し俺に投げた
短剣は大きく弧を描き俺の手元へ―――!
奴が短剣を取り上げるより前に素早く短剣を手に取り 脇腹へ一突き
この場の全員が唖然とする
返り血で真っ赤に染まる自分の手
「な・・・・っ」
驚きの声を上げ短剣を見つめるオスマン帝国
俺は短剣を力の限りに引き抜いた
飛び散る鮮血
俺は大量の返り血を浴びる事となった
ヨロヨロと立ち上がりあとずさる
俺も立ち上がった
奴は胸と脇腹から血を流している 出血の酷い胸の傷を押さえ 肩で息をする
「ハハハッ・・・おもしれぇ・・・」
息も絶え絶えに笑う
再度拘束されたデルタに向く
「そこの兄ちゃんがいなかったら・・・危なかった・・ねぇい?」
するとデルタを拘束する兵士へ向くと
「・・・離して・・やんな」
そう命令するとデルタは拘束を解かれた
再び俺と向かい合う
「なかなか・・・強い・・・じゃあ・・ねぇか・・」
途切れ途切れに 言う
「・・ハッ・・気に入った・・!・・・また・・逢おうぜぃ・・」
背を向け少しずつ歩き出す
その背中を俺はただ見つめていた
兵士達が駆け寄ると崩れるようにして オスマン帝国は倒れた
その光景を俺はずっと見ていた