東方 宝涙仙 <壱(1)~玖(9)>総集編
この館のお嬢様(レミリア)は昔階段の多い家がカッコイイと思ってたらしく、いまさらになってこの館の持ち主(レミリア)は昔の自分を馬鹿に思っている。
「飛べばいいのよ。」
飛べばいいのですよ。そうですよおぜうさま。頭使ってください。
それにしても自分の家を飛行で移動するお嬢様はどこかアホっぽい。
「お嬢様どこかへ行かれるんですか?」
飛んでいるレミリアに一人のメイドが話しかけた。
※夢子(ゆめこ)
二つ名:魔界メイド/Maid
能力:不明
「あぁ夢子、ちょうどよかった。傘持ってきてくれないかしら?」
「日傘ですか?・・・とういうか日傘しかないですね。かしこまりました。」
「アンタはあの脳天気長と違って瀟洒ね。」
「ありがとうございます。」
そう言い夢子は傘を取りに行った。
夢子はレミリアに服従している。もともと魔界のメイドとして働いていた彼女は始めは紅魔館のメンバーに抵抗があったが、レミリアを始めとするその他のメンバーの穏やかさに心を開いてくれた。
だが、彼女はそんな紅魔館のメンバーであった咲夜を知らない。彼女が配属されたころにはメイド長は十六夜咲夜でなく雨霧風香となっていた。
ときどきレミリアが「咲夜」と口にした時はよく質問しているからある程度のことは知っているだろうけど、顔や姿は知らない。
「あの、お一人ですか?」
傘を持って戻ってきた夢子がレミリアに語る。
「ん?ええ。ちょっと散歩に。」
「傘持ちましょうか?」
「大丈夫よ。今日は一人で歩きたい気分なの。」
「そういや私が配属されてからまだ一度も散歩したことありませんよね?」
「咲夜がいなくなってからしてないわ。」
「そうですか・・・。そんなにも元メイド長の事が・・・。」
「気にしなくて大丈夫よ。じゃぁ行ってくるわ。」
「いってらっしゃいませお嬢様。」
レミリアに傘をわたし、夢子は頭を下げて主を見送った。
「久々の外ねぇ。体が日光にますます弱くなってなけりゃいいけど。」
そして永遠に黒い夜を仰いでいた紅き幼き月は玄関の扉を力強く開け放ち、外にでた。
▼参(3)に続く
Touhou Houruisen -参(3)
日差しの強い空の下、日差しに弱い吸血鬼は傘を差してたたずんでいた。
「なんでよりによってたまたま散歩に出かける日にこんなに日差しが・・・。」
久々に散歩をしようとしていたレミリアは館の庭ですでにその意欲を失いかけていた。日差しに弱い吸血鬼にとってこの日差しは厳しい。
「・・・帰ろうかな。」
しかしここまで用意して引き返すのもなんだか悔しいと思ったのか、レミリアは前進し始めた。
庭を抜けるだけですでに疲れていた。
庭を抜けると、そこには鉄格子でできた大きな門がある。そこに一人の女性門番が立っている。
この門番に一番合う効果音はzzzであるといえるだろう。吸血鬼主の皮肉にも日差しに当たり気持ち良さそうに寝ている。
「zzz。」
「おいコラ中国。」
「zzzzzz。」
殴った。何発か。特に腹を。正確には鳩尾(みぞおち)を。
「グッブファハッ!!・・・誰だ!?」
「おはよう、中国。」
「うぇ!?お、お嬢様!?なんでこんなとこに!?」
※紅 美鈴(ほん めいりん)
二つ名:華人小娘(かじんこむすめ)
能力:気を使う程度の能力
「アンタ不眠不足なんじゃないの?」
「うまい、ヤマザナドゥ君座布団持ってきなさい!」
「閻魔によくそんなこと言えるわね。」
エヘへと笑い、風香同様お説教フラグを華麗に回避する美鈴。レミリアはすでに呆れていて説教なんてする気なんてない。
「それより、こんな日差しの強い日になんで外俳諧してるんですか?」
「散歩よ。」
「あー、お嬢様の散歩とは懐かしいですねー。どういう風の吹き回しですか?」
「久々に夜以外を仰ぎたくなるのよ。」
「気をつけてくださいね。無理しないで散歩中室内とか入ってください。」
美鈴でも気の利いたセリフを言えるというのにあの能天気長は・・・と脳内で思うレミリア。しかし室内といっても吸血鬼がフラフラ寄れる室内などめったに・・・あ、いや、あった。吸血鬼立ち入りOKの貧乏神社が。
あそこなら紅茶とケーキくらいだしてくれるかもしれないし、何よりもくつろぎやすい。
「わかったわ。アンタも寝ないように気をつけなさい。次寝てたら永遠に起きれないようにするわよ?」
「うへぇー・・・。」
ひるむ美鈴を見て少し上機嫌なおぜうさま。どえす。どえすですおおぜうさま。
行く所が決まれば歩くのが楽になる。レミリアは無駄に放浪するよりは目的があったほうが楽しめる性格らしい。
急に元気になったように笑顔で歩く。こんなにも散歩は楽しかったのか。
一方美鈴はすでに夢の中だった。
ー博麗神社ー
「いやー、暑いわー。こんな日は異変起きても絶対に動きたくないわー。」
※博麗 霊夢(はくれい れいむ)
二つ名:夢と伝統を保守する巫女
能力:主に空を飛ぶ程度の能力
「そんなだから賽銭入れてくれるやつがいないんだぜ?」
※霧雨 魔理沙
二つ名:普通の魔法使い
能力:主に魔法を使う程度の能力
「あんたいつからいたのよ。」
「それはアタシじゃなくて自分の心に問うべきだぜ!」
「あぁ、暑さに頭ピチュられたか・・・。」
いつも以上にグダグダなテンションな巫女に、新しい言葉を覚えたから今すぐにでも使いたい魔法使い。一応これでも主人公の座を誇る権力はある二人である。
暑いと働く気を失い、寒いと動く気をなくす巫女。"働く"と"動く"は漢字が似ていても全く意味が違うので注意。しかしこの巫女に対して用いる場合はどちらも同じ意味になるので日本語は難しい。すなわちどちらも「異変解決はめんどくさいのでしたくないです」という意味だ。
「こんな暑い日によくそんな暑そうな服着てられるわねー。尊敬するわー。」
「ブリ●ガ唱えれば簡単に涼しくなるぜ。」
「あんたにそんな魔法唱えられるわけないじゃない。あんたならできてせいぜいヒャ●ルコくらいよ。」
「てかスク●アエニッ●スに訴えられるからやめろ。」
「あんたが最初に言ってきたんでしょー。あんたにあんなゲーム貸すんじゃなかった。」
「飽きたぜ。」
「じゃぁ返しなさいよ。」
「いつまで会話文続ける気だお前らぁぁ!!」
吸血鬼レミリア・スカーレットさん到着。二人も急な登場に驚いているようだ。あ、いや巫女のほうはいたって無反応。
レミリアは到着してツッこむなりすぐに倒れてしまった。炎天下にやられたのか、唸りながら力尽きた。
倒れているレミリアを、ジト目に近いような無表情の目で見下す霊夢。またお前か、と言わんばかりの表情でレミリアを見つめる魔理沙。
「どうすんのよこれ。」
「日干しにしてやるか?」
「死んじゃうわよ。死んでも構わないけど。」
「とりあえず部屋に連れ込んどこうぜ。」
「うちは病院じゃないのよ。」
作品名:東方 宝涙仙 <壱(1)~玖(9)>総集編 作家名:きんとき