東方 宝涙仙 <壱(1)~玖(9)>総集編
焦り笑いを浮かべる美鈴は本当に苦しそうだった。なんかもう卵とか産みそうな表情だった。
「ちゃんと門番しなさいよ?」
「イエッ・・・サ・・・。ゴホッ。」
おもいの他大ダメージを与えられたので風香は満足そうに門を後にし、部屋へ向かった。門から玄関までが無駄に遠い紅魔館。リフォームして全体的に狭くするべきだと風香は昔レミリアに訴えていた。無論拒否されたが。
「やっと着いたぁ。はぁもう無理、動きたくないー。」
余った力で紅魔館の扉を開ける風香はまるでニート生活を50年間くらい行って弱体化した人くらいのに非力にみえる。
足をずるずる引きずるようにだらだらと歩く風香。赤いカーペットの毛並みがその引きずったところをラインを引くように跡が残る。
「部屋まで遠いなぁ・・・。もういっそここらで寝てしまおうか。ちょうど図書館近いし。」
風香の体が元々目指していた方向と違う方向にまがる。
風香の向かう先は図書館に確定したようだ。というか図書館で寝るつもりなのだろうかこの新メイド長は。
この紅魔館には紅魔館名所(自称)の大図書館がある。大というレベルではないほど広く、無限に広がる本棚と無数の本。魔女が経営している為か、魔法使いにしか読めない本も取り入れられているらしいという様々な分野に特化した図書館。
名は"ヴアル魔法図書館"。よく白黒魔法使いが遊びにくるという。遊びに来るたびに本が減っている気がするのが特徴、簡潔にいうと毎度盗まれている。
経営者の魔女のほうも本を盗まれては追加して、赤字で困ってしまう。そうでもないけど。
「入りますよー。」
「紅白?それとも白黒?」
「んー。三原色使用です。」
「あぁ、なんだ。アナタね。」
※パチュリー・ノーレッジ
二つ名:動かない大図書館
能力:火水木金土日月を操る程度の能力
紅白とはあの巫女を意味し。白黒はあの魔法使いを意味する、らしい。
「あの魔法使いに盗られた本は返ってきました?」
「ええ、4冊。」
「貸した数は?」
「貸した本なんてないわよ。」
あーたしかに。と風香が困った笑みを浮かべて納得する。
「じゃあ盗まれた本の数は?」
「数えたこともないわ。38冊ほど紛失してるけど。」
「まだ38冊返ってきてないようですね。」
すなわち44冊も持っていかれたのだろう。見事生還した4冊の勇者以外の38冊は盗んだ本人がまだ持っているのだろうか。案外あっさり捨ててそうだ。
「私が取り返しに行きましょうか?」
「アナタ語でそれを翻訳すると『部下のメイドに取り返しに行かせましょうか』になるんだけどあってる?」
「さすがです。いやはや、パチュリー様はお嬢様より私を見抜いてる気が・・・。」
現実はそのお嬢様にも見抜かれてるのだが、それを見抜いていない風香。
風香はその辺のソファーに腰掛け目を閉じた。基本的に寝るときは座って寝る。というか寝っ転がって寝れないのだ、色々訳があって(後ほど投稿予定、キャラ詳細編参照)。
パチュリーはその姿を気にも止めなかった。黙々と本を読んでいた。
風香が目をつぶって数分後、爆発音が聞えた。近い。この部屋からたしかに近い場所で爆発が起きた。
「今の・・・爆発?」
さすがのパチュリーもこれには気に止めた。
「そのようですね。部外者でしょうか。」
「わからないわ。見に行きましょう。」
「はい。」
風香の表情が珍しく本気の表情になった。二人は図書館をでて爆発音の鳴ったと思われる方向を目指した。
途中オロオロしながら廊下で怯えている掃除メイド妖精や、野次馬のように音源を捜す好奇心旺盛な洗濯メイド妖精などがいた。
「外から探したほうがよさそうね。外から炎上している部分を探しましょう。」
「はい。」
今の風香にはただ返事をしてパチュリーに着いて行くしかなかった。
今さらな説明だがパチュリーは元々重度の喘息をわずらっている。下手をすればそのまま動けなくなるほど発作に体力を奪われる。その為あまり全力では移動できないのだ。しかし紅魔館の緊急事態にそんなことを気にしてはいられない。パチュリーがその喘息がいつ発症してもいいように風香は備えていた。が、いざなったらどうしようか悩んでいた。
「ゴホッ」
パチュリーが咳をしだした。
(やっぱ耐え切れなかったか、でも私にはなにも・・・)
風香は心の中で罪悪感に追われていた。これ以上無理させるわけにはいかない。まだ症状が軽いうちに止めておこうと思い声をかけた。
「パ、パチュリー様・・・」
「大丈夫よ、急ぎましょう。」
「でもその喘息じゃ!」
「私が力尽きようと、紅魔館は守らなきゃいけない義務があるの。」
「しかしあなたがここで無理をされれば・・・」
「あなたも誰かに拾われて、その人の為に紅魔館でこうしてメイド長やってるんでしょ。」
「・・・。」
「動けなくなったら死ぬわけじゃないんだし、大丈夫よ。心配してくれてありがとう。」
「無理なさらないでくださいね。」
正直なところパチュリーは辛かった。爆発による煙を吸い、さらに全力で移動している。飛んで移動しているとはいえ彼女にはかなりの負担だった。
ただ、自分の人生の全てといえる紅魔館を喘息ごときで見捨てるわけにはいかなかった。
二人の前に紅魔館本館エントランスが見えてきた。その頃にはすでにパチュリーも限界が近づいてきていた。
エントランスには大勢の妖精メイドが集まっていた。
「あ、メイド長!無事でしたか!」
風香は紅魔館の危機であるなか逃げて紅魔館を見物している妖精メイドが許せなかった。
「なんで逃げてボーっとしてるのよアナタ達!」
「え?」
「人命救助だとか原因探しくらいしなさいよ!」
「す、すいません・・・。」
「メイドが圧倒的に少ないな、食事班は?」
「それが・・・まだでして・・・。」
「もういいわ。アナタ達はパチュリー様を診ていて。私が食事班を探すわ。おそらくキッチンにいるでしょうけど。」
「他にすることは・・・」
「自分達で考えろ!」
そう言って風香は全速力で紅魔館内部へと戻って行った。
炎上が強まり、一部が崩落していた。
外では美鈴が爆発した場所を探していた。
「まずいわね・・・。あの崩落した部屋は確か・・・・・。」
外からも中からも紅魔館は緊迫した空気に包まれていた。
▼陸(6)に続く
Touhou Houruisen -陸(6)
ー妖精の湖ー
珍しく昼から氷の妖精と闇の妖怪達が湖の近くで遊んでいた。闇の妖怪が昼間外にでることは珍しい。
眠い中氷の妖精に朝から起こされて遊びに誘われたようだ。
「おっしゃー、次はアイススケーターだ!」
※チルノ
二つ名:湖上の妖精
能力:冷気を操る程度の能力
「アイススケーター、ってなに?」
※ルーミア
二つ名:宵闇の妖怪
能力:闇を操る程度の能力
作品名:東方 宝涙仙 <壱(1)~玖(9)>総集編 作家名:きんとき