東方 宝涙仙 <壱(1)~玖(9)>総集編
「ルーミィはそんなことも知らないのかー。氷の上を滑る大会のことだ!」
「そーなのかー。チルちゃん物知りだね。」
アイススケートの事である。スケーターとスケートの違いがわからないのかスケートという言葉を知らないのか不明ではあるが、仲間の間で伝わればそれでいいらしい。
「でも氷ないよ?」
「アタイが作る!」
チルノはスペルカードと呼ばれる札をとりだした。
「凍符『パーフェクトフリーズ』!!」
チルノの周りが冷気と氷で包まれる。そしてみるみると湖が凍結してゆく。
もちろんながらルーミアも凍えるほど寒いのだが、なぜか不思議と大丈夫なのが幻想郷。
「すごいねチルちゃん、湖がピカピカになった。」
ルーミアが輝きを見せつける氷の湖を眺める。表面だけでなく深くまで凍りついている。チルノの能力はそれほどまで強いのだが、チルノ自体がそこまで強くない。というより頭のほうが弱い。別に生まれつきの障害を持っているとかそういうのではなく、単に頭が悪い。
「ルーミィ滑り方知ってるか?」
「知らなーい。」
「ふむふむならアタイの言うとおりに滑れ!」
「わかったー。」
チルノの氷上レッスンが始まる。
「まず凍ってないとこから走る!」
「走る。」
「そして凍ってるとこにきたら走るのをやめる!」
「やめる!」
「滑れる!」
「滑る!」
ようするに凍ってないとこから助走をつけて凍ったとこではその助走の勢いに任せて滑るという遊びだ。全く持ってアイススケートでもないが・・・。もしかしたらこれが"アイススケーター"というアイススケートとは別の遊びなのかもしれない。
「じゃぁアタイからいくぞー!」
チルノが助走をつける為に湖から離れる。
「ちょっと待って!」
そしてそのチルノをルーミアが呼び止める。
「なんだー?」
「どうせならもうちょっとお友達呼んで遊ぼうよ。」
元々夜に行動する妖怪であるから昼間は遊ばない。ルーミアにとって昼に友達と遊ぶのは珍しい。だからもっといろんな友達と遊びたいのだ。
「そうだなー、じゃあ別々に誰か呼びにいくか!」
「そーしよう!」
呼んだらまた戻ってくるという約束を交わして二人は一旦バイバイした。
ルーミアと別行動を始めたチルノは妖精の湖を後にし、妖精の森へと向かった。
「そうとなれば呼ぶのはあいつしかいないな!」
チルノの目指す相手はこの森の大妖精。比較的湖の近くに住んでいる妖精でチルノと仲がいい。
暖気を好む妖精にとってチルノは苦手な存在らしい。しかし大妖精はそんなチルノを見捨てず、むしろ仲良く接してくれたいい子である。
大妖精はこれといって家はなく、基本的に特定の木の上で生活したり、湖の近くでチルノと夜を過ごす。
「大ちゃーん!」
「あ、チルノちゃん。おはよう。」
※大妖精(名前不明)
能力:不明
呼び名:大ちゃん
「おはようって時間じゃないけどな。」
「まあね。で、チルノちゃん何しにきたの?」
木の上の大妖精は今にも落ちそうなくらい首を葉っぱと枝の群れから突き出して問いかけてくる。というよりチルノもよく見つけたな、と作者から一言。
「遊ぼう!」
「んー、うん、ちょっと待ってね!」
「わかった!」
チルノの友達探し&遊びの交渉はもう成立した。妖精は基本みんな暇なのだろう。
チルノと別行動を始めたルーミアは妖精の湖を後にし、とある畑へと向かった。
「いるかなー。」
ルーミアは木々の生い茂って薄暗い森の中にある小さな小屋のような家を目指した。その家には一人の女の子が一人で暮らしている。畑を持っている為自給自足で暮らしているという。小さいわりには少ししっかりとした子だ。
年齢はおそらくルーミアと同じくらいだろう。見た目もどこかルーミアっぽい感じだ。
ルーミアも会うのが久々なせいか、まずなんと話しかけるべきか悩んでいた。
そうこうしているうちにルーミアも目的地に到着し家のドアをノックした。
「かーぼちゃん。いるー?」
「ただいまお食事中ー。誰ー?」
※かぼちゃん(名前不明)
能力:霊体を操る程度の能力
二つ名:南瓜(なんうり)の畑娘
「ルーミア。」
「ルーミア?」
「うんルーミア。」
「ああ!ルーミィちゃんか!」
「そうだよー。」
「ちょっと待って、今開けるよ!」
「うん。」
小さな家の小さなドアが開き、小さな(といってもルーミアくらいだが)女の子が大きなカボチャを持ってでてきた。
久々に会ったので少し恥ずかしがってるルーミアを察知してかぼちゃんが話しかける。
「久々だね!」
「うん。元気だった?」
「何回か風邪ひいたけど今は元気!」
「そーなのかー。そうそう、今から遊べない?」
「遊ぼう遊ぼう!」
かぼちゃんもルーミアも緊張が解けたのか、笑顔で話せていた。ついでに交渉も成立。しかしまだこれから説明しなきゃいけないこともある。
「ルーミアの友達も一緒だけどいい?」
「ルーミィちゃんの?嫌な子じゃなければいいけど・・・。」
「チルノちゃんっていう子でね、いい子だよ!」
「そーなのかー。」
「ルーミアの真似するな!」
「アハハハ、昔っからルーミィはそれが口癖だねー。」
ルーミアは少しむすっとしていたが楽しそうだった。
さて、承諾が出たので湖へと向かうルーミア達。
ルーミアは心のどこかで昼間にみんなと遊ぶのもいいなぁ と思っていた。
今まで人生のほとんどが夜の記憶しかないルーミアには新鮮な感覚だった。
かぼちゃんの家を離れ、二人は湖へと向かった。
その頃大妖精の支度が終わったチルノペアも湖へ向かった。この頃チルノはルーミアが誰を連れてくるのかを知らない為ワクワクしていた。大妖精はルーミアと会うことすら知らない。ただ、昔たまに遊んだことはあるから拒絶はしないだろう。第一大妖精は拒絶なんてしない子だ。だからチルノとも仲良くなれた。
凍った湖は4人を待ち構えるように空に浮かぶ雲を映していた。
▼漆(7)へ続く
Touhou Houruisen -漆(7)
ー紅魔館料理科総合室ー
妖精メイド達が食事の準備をしていた。昔小学校とかで給食室に大きな鍋とかがあっただろうが、そんな規模ではないくらいに大きい鍋で料理を作る。
しかし館の主、門番、メイド長など、位の高いメンバーのぶんは大キッチンの隣の部屋の少し小さい第二キッチンで作る。調味料とかが足りないときはよく隣のキッチン同士貸し借りをする。まあ、どうでもいい情報だが。
「メイドの分はいいから早く先にお嬢様達の分作ってー」
※宝天寺 あかり
二つ名:失敗ファッションセンスの塊
料理長
能力:重さを操る程度の能力
「はい」「了解です」「わかりましたー」
基本的に紅魔館のキッチンはどっちとも料理長の宝天寺あかりが仕切る。その為、あかりの指示に従い妖精メイド達が仕事をする。
作品名:東方 宝涙仙 <壱(1)~玖(9)>総集編 作家名:きんとき