Blue
「盗み聞きしてんな。」
「・・ごめん。」
「俺の正体分かったか?」
「・・・KIDと何か関係がある奴。」
「そう、俺はKIDと関係がある。」
先ほどの新一の話し方は、
誰かに聞いたか、書物で読んだKIDへの言葉じゃない。
本人を知っている。そういう話し方だった。
「・・・だとしたら、新一は・・人間じゃない。」
「・・・・・。」
「だって・・KIDは大昔の人で・・だから、
もし知り合いなら・・・ありえないことで・・」
それで?と言いながら、
新一は自分の横をポンポンと叩いた。
それに従い、少し距離を空けて座った。
「・・もし、あの本が本当だとすれば、
新一は・・・しん・・・いちは・・・・・・」
「ヴァンパイア。」
「・・・・っ・・・やっぱり、そうなの!!!???」
「だったら?」
「・・・・信じ・・・・られないよ。」
「なら、信じなければいい。」
「・・・ぇ・・?」
「信じられないなら、信じなければいい。」
新一の表情からは、
本当なのか、嘘なのか分からなかった。
だが、快斗は心のどこかで感じていた。
「・・・・・でも・・なんか・・納得してるっていうか、
・・ストンってハマったような・・そんな気がする。」
「怖いか?」
「怖くはない。」
「・・即答だな。」
新一の質問に即答で答えた快斗に思わず笑みがこぼれた。
「最初から、不思議だった。
明らかに怪しいのに不思議と怖くないし・・むしろ安心する。」
「・・・・そっか。」
新一は上半身を後ろへ倒し、天井を見上げた。
その顔は何かを懐かしんでいるように見えた。
快斗はやはり、新一が傍にいる事に安心感を感じていた。
本当に不思議・・・
「俺、こう見えて人見知りなんだ。
だけど、全然新一に対してはそれが無かった。」
新一はその言葉を聞き、目を閉じて、
ここに来た時のことを思い出した。
「俺は緊張したな。」
「・・・新一が?」
その言葉は快斗にとって意外だった。
「ずっと会いたかったから。
怒ってるかと思ったから・・・・・。
緊張して、どうしていいか分からなかった。」
「・・・・そうだったんだ。」
少し口元で迷ったが、
息を吐き出して新一は目を閉じたまま言った。
「・・・・・俺とお前は昔会ってるんだ。」
「・・・それって・・もしかして・・」
「お前の前世。」
「・・・っ・・・!!」
快斗が新一へと振り返り、
目が閉じられたままの顔を見つめた。
「お前が忘れてくれてて・・良かったのかもな。」
やっぱり・・・・
俺の予想は・・
「・・・・ねぇ・・・俺の前世って―――
「もう寝ろ。
体壊すぞ?」
これ以上は今日はまだ言いたくないのか、
それともこれ以上は話す気はないのか・・・
快斗の質問を遮って新一は快斗に背をむけた。
「・・新一・・・」
「俺も寝る。それとも、一緒に寝るか?」
「・・寝ないよっ!!」
嫌味っぽくニヤリと笑って振り返った新一の言葉に反射的に否定する。
その瞬間、もう今日はこれ以上聞けないと思った。
ギシリと音をたてて立ち上がる。
「おやすみ快斗。」
「・・・・おやすみ、新一。」
新一はどうして話してくれないんだろう。
・・・俺がKIDなんでしょう?
・・・・・・そうなんでしょう?
俺が覚えていないから?
俺がKIDとは全然違うから?
・・・・・・・・なんでこんなに悔しい気持ちになるんだろ。