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いばらの森

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「おねぇちゃん、ごほんよんで」
「ん?いいよ。何の本? …いばら姫かぁ」
「ん!このごほんがすきなの。おひめさまのえがかわいいの」
「…なるほど。…ほら、こっち、おいで」
「うん!」
「えーと。…むかしむかし、…王様とお妃様には子供がおりませんでした。けれどある日お妃様が水浴びをしていると、蛙が現れて『お妃様はすぐにお子を授かるでしょう』と言いました」
「ねぇ、おねぇちゃん、どうしておきさきさまはかえるさんとおはなしできたの?」
「…なんでだろうなぁ。あ、そうだ!蛙のサーカスとかいって、このお妃様国中回ったら、人気者だったかもしれないよな」
「…かえるさん、そんなにたくさんいたら、いや…」
「…そうだな。ちょっと怖いかもな…。で、お妃様は、本当にすぐに、かわいらしい女の子を授かりました」
「さずかるってなぁに」
「うーんと、…とにかく、お姫様が生まれたってこと」
「ふぅん。よかったねぇ」
「そうだな。で。王様とお妃様はたいそう喜んで、お祝いをしました。そして、国中の魔法使いも、お祝いに呼びました」
「しってる!おさらがたりなくなるの!」
「そうそう。…魔法使いのためのお皿はお城には十二枚しかなく、十三人目は呼ぶことが出来なかったので、招待しませんでした。…皿くらい買えばいいのにな?王様のくせにケチだよな」
「おさら、かえなかったのかなぁ…」
「さぁね。売ってる店がなかったのかもな。…魔法使い達は、お姫様にお祝いの予言を贈りました。ひとりは美しさ、ひとりは徳の高さ、ひとりはやさしさ…って、こういうのは別にもらうもんじゃなくて養うもんだと思うけどな…教育に良くねえよなぁ…」
「おねぇちゃん?」
「あ、ごめんごめん。そうして十一人目の魔法使いが予言を贈った時のことでした。お祝いに呼んでもらえなかった十三人目の魔法使いが、お城に現れたのです!」
「わぁ!だめぇ、わるいひとなの!」
「さぁ、お城は大変です。悪い魔法使いは、自分だけのけ者にされたことにたいそう腹を立てていたので、お姫様は十五歳になったら糸巻きの紬に刺されて死ぬだろう、と予言しました。…ほんと、大人気ないおばさんだ…つかそんな性格悪いから呼ばれなかったんだろうよ…」
「おねぇちゃん?」
「あ、ごめんごめん、ひとりごと。予言は一度口に出してしまったらなかったことにはできません。王様は、この世の終わりのように力が抜けてしまいました。…しかし、まだ予言を贈っていない魔法使いがもうひとりだけいたのです。それは、十二人目の魔法使いでした。魔法使いは言いました。『呪いを消すことは出来ませんが、呪いを弱くすることなら出来ます。お姫様は、紬に刺されても、百年の眠りに落ちるだけで、死ぬことはありません』」
「ひゃくねんもねてたらおばあちゃんになっちゃうね」
「…たしかにね。…さて、お姫様は予言の通り、美しく賢く優しい、誰からも好かれる娘に育ちました。そして、十五歳の誕生日のことです。お姫様は、ひとり、お城の中の塔に登っていました。すると、そこではひとりのおばあさんが糸を紡いでいたのです。…十五年前、王様の命令で国中の糸巻きが燃やされてしまったはずなのに…」
「もやしちゃったの?」
「そう。王様は、お姫様が糸巻きの紬に刺されないように、国中の糸巻きを燃やしてしまったんだ。…っていうか、紡糸工業とか繊維工場とか商売あがったりだよなぁ…」
「ボウシ…?」
「あ、ごめん、またひとりごとだった。ごめんな。…えーと。お城の皆が眠りに着き、お城の周りにあったいばらの蔓がどんどんのびていって、とうとうお城は深い深いいばらの森に覆われてしまいました。そして百年。たくさんの人が、いばらの奥、お城の塔の上に眠っている美しいお姫様を一目見ようとやってきましたが、誰一人としてお姫様のところへはたどり着けませんでした」
「しってる!あのね、おうじさまがくるのをまってたの」
「…。そして、百年が過ぎました。あるひとりの旅の王子様が、お城へやってきたのです。王子様はどんなに危ないと留められてもひるまず、今もお城の奥で眠り続けているお姫様に一目会おうと、いばらの蔓を払ってお城へ入って行ったのです…」
作品名:いばらの森 作家名:スサ