こらぼでほすと ニート10
食事を作っていた歌姫様とレイ、悟空は後片付けは除外だ。アスランとシンで洗い物は片付ける。
「もちろんだ、ラクス。とりあえず、ママニールを連行してくれ。」
「脇部屋の布団を敷いてきます。」
レイがさっさかと脇部屋の段取りに走る。シンとトダカが食器を片付けていると、坊主の食事が終わった寺の女房も片付けに入るが、それはキラが止める。
「まず、ママはお昼寝。それから、僕と対戦。」
「え? いや、とりあえず、ここを片付けないとな。」
「そっちは、俺たちでやります。早く寝て起きてください。ママニールと戦いたい人間が多いんです。」
「おやつを楽しんでいただきませんとね、ママ。さあ、リジェネ、ママを連れて行きますよ? 」
え、いや、待て、とか言っているうちに、寺の女房は廊下へ連れ出される。その後から、悟空が水と漢方薬の並々入ったグラスを手に追い駆けている。
「三蔵さん、食後はコーヒーてすか? 」
「おう、薄めのブラックだ。」
アスランも慣れたもので、坊主に食後のコーヒーを用意する。卓袱台は、瞬く間に片付けられて、そこにトダカと坊主が陣取る。アスランとシンは洗い物を片付ける。皿ばかりだから、洗い物も比較的楽だ。
「どうだい? リジェネくんは。」
「スーパーニートの名前は伊達じゃないな。あいつ、複数での会話はできないらしい。」
大人数で、わいわいと騒がれると、リジェネは対応できないらしく、黙って様子を見ている。相手が一人だと会話もできる様子だが、それも話題が思いつかないのか、尋ねられたら答えるという感じだ。引き篭もっているスーパーニートなんてものだと、そういう対応はできないと、坊主は見抜いた。
「ヴェーダ本体で活動していたし、イノベイド同士だと会話もリンクで、どうにかなるからだろうね。」
「まだ、紫猫のほうがマシだな。」
「そりゃ、うちの娘さんが手塩にかけて世話してたんだから、一通りのマナーは叩き込まれているさ。それに組織の実働部隊では意思疎通も言葉だからね。」
ティエリアは、ニールから、「おまえは人間だ。」 と、言われ続けていたから、人間としての思考に馴染んでいる。リジェネは、そういうものがなかったのだから、社会性なんてものはないのだろう。とはいうものの、ここに滞在したいなら、その社会性がないと暮らすのも大変ではあるから、ニールはティエリアにしていたように、少しずつ、それを教えていくつもりらしい。要は慣れだ。命じられたことをやるのではなく、自分が考えたことを相手に伝えて動くというのが重要だ。まだ、そこいらは修行中というところだ。
「女房の暇つぶしには都合がいい。たまに物騒なことほざくから監視は必要だぞ、舅。」
「それはハイネがやるさ。ハイネが仕事の時はアイシャさんが顔を出してくれる。今日は、シンとレイが空いていたから、出張っているがね。」
「そういや、カッパたちは来ないな? 」
「今、店のほうが手薄なんで、そちらの担当をしてくれてるんだ。だから、休日は不参加だそうだ。」
シンとレイが留守で、ハイネはニールと同伴の時しか出勤しない、なんてことになると、人手不足になる。店のほうでフル活動しているので休日は休ませてくれ、と、本日のイベントも欠席した。
「どうせ、カッパが独占欲出してんだろ。」
「そりゃそうなるだろうさ。ここんとこ、悟浄くんは、一人でヘルプをしてくれてるから、なかなか夫夫で会話もできない状態だ。」
トダカも坊主も、独占欲丸出しのカッパの考えなんてお見通しだ。どうせ、夫夫でいちゃこらしたいから、休みは女房を独占したいからのことだ。
「きみみたいに、誰彼憚らずにいちゃこらできたら、そういうこともないんだろうけどねぇ。」
「ああ? うちはいちゃこらはしてねぇーぞ? 舅。」
あの二人だけ空間を、この大人数の中で構築しているというのに、坊主は、それに気付かない。女房のほうも、同じようで、いちゃこらしているつもりはないのだ。ある意味、清々しいほどのいちゃこら夫夫っぷりだが、当人たちだけが気付かない。
「それなら、たまには里に返してもらおう。」
「雨が降ったら役立たずだ。連れて行け。」
「はいはい、天気予報と相談しておくよ。」
坊主とトダカも、そんな会話を楽しんでいる。それを台所で洗い物をしつつ、アスランとシンが眺めている。
「俺、とーさんと三蔵さんが付き合ってるって噂が出た時に考えたんだけどさ。あれはあれで、いちゃこらしてないか? アスラン。」
「いちゃこらではないと思うが、まあ、仲は良いよな? 年が離れてる割に、会話は弾んでるんだ。」
『吉祥富貴』は普通ではない。年齢格差が激しい割りに、各人、仲が良かったりする。特に、三蔵とトダカはカウンターを挟んで、店でも会話していることが多い関係だ。以前、その所為でトダカーズラブでは、三蔵とトダカが付き合ってるという噂まで流れたほどだが、当人たちは全否定した。まあ、今を見ると、確かに付き合っているということはない。仲良くニールの取り合いにかこつけて遊んでいるという感じだ。
「どっちにも言えるのはさ、どっちも、ねーさんにはベタ甘いってとこだな。」
「あははは・・・そりゃそうだ。三蔵さんが、あんなにママニールを大切にする人だとは俺も分からなかった。」
トダカも三蔵も、ニールには甘い。シンも、大概にトダカに甘やかされているとは思うが、それ以上にニールのことは甘やかしていると感じている。精神的にガタガタになったから、それを支えてやろうとしているのだと理解しているが、本当に猫可愛がりだとは思う。それに嫉妬するなんて感情はないので、別にイヤではない。むしろ、これで自分がプラントに戻っても、トダカも一人にならなくてよかったと思っている。アカデミーでの勉強が終わったら、シンも進路を考える。今のところは、ザフトに復職して、『吉祥富貴』のコーディネーターたちとプラントを守りたいと思っている。ただ、そうなるとトダカと離れてしまうので、それは気にかかっていた。トダカーズラブが傍に居てくれるから、独りということはないだろうが、それでも家族ではない。一緒にプラントへ移って貰うというのもアリだろうが、オーヴとの関係があるから、トダカは来てくれないだろう。ニールという姉は、寺に永久就職した。たぶん、もう組織で働くことはない。つまり、トダカの傍に居てくれる。そう思うと、自分の進路も決めやすくなった。ただ、気になるのは、その姉の体調だ。やっぱり少しずつ弱ってはいる。当人は気付いていない様子だが、すぐに気付くだろう。
「刹那のヤツ、いつ、ダブルオーを完成させてくれっかな。」
「冬ぐらいになるだろう。下手をすれば春になるらしい。」
「早くしてやってくれないかなあ。ねーさんが、しんどそうな時は気になるよ。」
「なんとか体調は維持させておくさ。おまえも協力してくれるだろ? シン。」
「当たり前だ。とりあえず、アカデミーのほうをクリアーしたら、また、こっちにも顔は出す。もうちょっと時間くれ、アスラン。」
「もちろん、アカデミーが優先だ。せっかくの最先端知識だ。存分に吸収して来てくれ。」
作品名:こらぼでほすと ニート10 作家名:篠義