魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】
「それも、君達にあげるよ」
少し離れた場所から、そんな声が聞こえてきた。
全員が、そちらに視線を向ける。
すると、その人物が、何事もなかったかのように、こちらを向いて立っていた。
「「「「「「…!」」」」」」
その場の全員…ゆまは、単純に、その能力に…だが、他の五人は、その顔を見て、驚きのあまり声を失った。
その顔は…杏子の言っていたとおり…
美樹・さやか、そのモノだった。
それだけではない。胸当てのような青い甲冑、白いアンダーシャツ、羽織ったマント…その、どれをとっても、自分達が良く知る、美樹・さやかの物だった。
その人物は、自分に向けられた視線に対し、キッと睨みつけるような眼差しで応えながら…
「今晩、私が魔獣を狩ったのは、ここも含めて三ヶ所…」
その、ここ以外の場所を、告げ…
「そこにも、グリーフシードを、いくつか残してきた。それ等と合わせれば、魔法さえ使わなければ、しばらくは魔獣を狩らなくても大丈夫なはずだよね?」
そんなことを、言い出した。
「さやか…てめぇ…生き返ってきたかと思ったら、ずいぶんと偉そうな口をきくようになってるじゃんかよ…ええ!」
杏子は、相変わらず『さやか』と呼びながら、そう問いかけた。
だが、その人物は、杏子の言葉を無視し、ハッキリと、こう告げた…
「この街に現れる全ての魔獣は、私が狩る。君達は、もう、何もしなくていいよ」
「なんだと…」
「だから、今回みたいに邪魔されると迷惑なんだ。二度と、私の戦いの場に現れないで欲しいな。じゃあね」
最後に、ニッコリと笑みを浮かべると、その姿が、フッと消えた。その笑顔が…また、さやかそのものだった。
「どういうことだよ…なんなんだよ…さやか…」
杏子が、その場に崩れ落ちた。
ゆまが、慰めるように、その背中をポンポンと叩く。
「暁美さん…あの子、どう思う?」
マミが、神妙な面持ちで、そう訊ねた。
「私達のことを、はじめて見るような感じ…では、なかったわね」
ほむらが、そう答えた。
「じゃあ、本当に?」
マミが、少し期待を込めた感じで、訊き返してきた。
「事前に調べることもできるし…とにかく、そう決めてしまうのは、まだ早いわ」
ほむらは、あくまでも冷静に、そう返し…
「ただ、能力と、目的は、ハッキリしたわね」
「能力は、速く動けるだけではなく、空間跳躍系の…まさしく《瞬間移動》…《テレポーテーション》。目的は、『私達にグリーフシードを提供し、戦いから手を引かせようとしている』…そんなところかしらね?」
織莉子が、ほむらの言葉に答えた。
ほむらが、コクっと頷く。
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】 作家名:PN悠祐希