魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】
■ 第3話 青き剣閃、再び 【後編】 ■
「実は、昨日の夜、織莉子、自分の能力で、あの子がどこで何をしている人なのかを見つけ出して、直接、会いに行くって言ってたんだ」
美国邸で、キリカが、全員に、そう説明した。
「でも、織莉子さんの能力は、未来予知よね? どこに現れるかを知ることはできても、そういう、どこで何をしているのかを探るような能力ではなかったはずでは?」
ほむらが、そう訊き返した。
「それがさ…君達は、何かっていうとグリーフシードを差し出してくるから、実は、結構、余っちゃっててさ…だからって、貰った物を返すのも、悪いし…それで、せっかくだから、もっと、効率よく魔獣を倒せるようになれればって、二人で能力の開発なんてことを…やってたりしてたんだよ」
キリカが、そう答えた。
「…ってことは、なにか? あんたと織莉子は、あたし達が提供したグリーフシードを糧に、魔法の訓練を行っていたってのか?」
杏子が、それを確認する。
「まあ、そういうことになるのかな」
「…確かに、よほど、早急に力を欲しない限り、普通は、そんな事しない…というか、怖くてできないものね…」
マミが、少し呆れた様相で、そう言った。
何度も言うようだが、魔法少女にとって、グリーフシードの有無は、命に関わる重要事項だ。基本的には、なるべく消費を抑えるように心がけながら、魔獣と戦っている。開花した能力を試してみる程度ならともかく、魔力を大きく使用することになる訓練は、グリーフシードの数と、ソウルジェムの状態に、よほど余裕がない限り、普通は怖くて行うことはできない。ゆえに、大抵の魔法少女の実力は、戦闘を経ることで養われていくのだ。
ただし、例外はある。最初に開花させた能力が、あまりにも実戦向きではない場合などは、少々、無理をしてでも、新たな攻撃魔法を使えるようにならなければ、戦いに勝つことはできない。
しかし、織莉子とキリカは、攻撃力に関しては、そこまで切羽詰っているわけではない。にも関わらず、訓練を行って能力開発などと…いくらグリーフシードに余裕があるからといって、無謀にも程がある。
「で、その無謀を冒してまで、織莉子さんが手に入れた新たな能力が、いわゆる遠くを見る力…《透視能力》あるいは《千里眼》と呼べるものだったというわけね」
ほむらが、そう指摘した。
「そのとおり。ちなみに、私は、速度低下を突きつめた結果、なんと、時間を完全に止められるようになってしまいました」
キリカが、得意げに、そう語った。
「なっ! 時間をっ!?」
その単語に、ほむらが、驚きをあらわにした。
それこそ、かつての自分のステータス。それを、まさか、ここにきて他人に奪われるようなことになるとは…
だが、周囲の速度を低下させるということは、その究極に、ソレがあることは、なんとなく判っていたことだ。
「まあ、魔力の消費は半端ないし、止めた時間の中で私が動けるのも、ほんの数秒程度…それに、時間を止めちゃうと、その他の魔法が全然使えなくなるから、織莉子と一緒じゃないと、使いどころが難しいんだけどね」
キリカが、さらに、そう説明した。
もともと、キリカの《速度低下》の能力は、ソレを強く発動しようとすると、逆に攻撃威力が落ちるという欠点があった。《時間停止》が、その究極形であるならば、そういう弊害が起きてしまうのも当然のことだろう。
「でも…美国さんは、呉さんの能力の影響を受けないのよね? つまり、彼女だけは、その止まった時間中で能力を発揮することができるわけだから…恐ろしいわね…」
マミは、驚異のチート・コンビの誕生に、身震いする思いだった。
「そんなことよりも〜…ということは、オリコお姉ちゃんは、その新しい力で、昨日の夜に会った人を見つけて、会いに行っちゃったってことなんだよね? その人が…ミキなのかな?」
ゆまが、そんな考えを口にした。
「ミキ…って、さやかが生き返った形跡はなかったんだろ? じゃあ、織莉子は、どこの《ミキ》に会いに行ったってんだよ?」
杏子が、そう問いかけた。
だが、その場で、それに答えられる者は、誰もいなかった。
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】 作家名:PN悠祐希