魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】
「それにしても、君も、よく一人で、こんな所まで来ようと思ったね? 昨日、あれだけ力の差を見せつけてあげたのに、怖くなかったのかい?」
美樹が、急須に緑茶を入れながら、そう訊いてきた。
「私の周りは、頭に血が昇りやすい人達が多くて…ユックリとお話しするには、一人で来るしかなかったのよ。それに、あなた、私達の敵ではないでしょう?」
部屋の真ん中に置かれたちゃぶ台の傍に、チョコンと正座していた織莉子が、質問に答え、そう訊き返した。
「さてね…それはどうかな…」
美樹は、湯呑みに茶を注ぎ、織莉子の前に運んできた。
「どうぞ」
「いただきます…」
織莉子は、それを一口飲み…
「美味しいわ。普段は紅茶派なのだけど…たまには日本茶もいいわね」
「それは良かった」
美樹は、棚からペットボトルのミネラルウォーターを取り出し、ちゃぶ台を挟んで織莉子の正面に座った。
「さてと…で、君は、ボクと、なんの話しがしたいのかな?…こちらの用件は、昨晩、伝えた思うけど?」
「その理由よ。なんで、あなたは、わざわざ、あすなろから見滝原にやってきてまで、私達の代わりに戦ってくれようとしているの?」
「知る必要があるとは、思えないけどね」
「あるわ!」
「…!」
「あなたも、インキュベーターと契約して魔法を得た身なら、解っているはずよ。私達は、譲れない願いを叶える為に、命を懸けて魔獣と戦うことを選んだの。それが、私達、魔法少女になった者の使命であると同時に、誇りでもあるわ」
「誇り…」
「そうよ。それだけの想いを抱き、選んだこと…それが、私達の誇り。だから、仲間同士の助け合いならばともかく、意味も解らない他人の施しを、安に受け入れることはできないわ。少なくとも、私はね」
織莉子は、魔法少女としての、今の信念を語った。
「誇りとか、想いとか、偉そうに語ったって、結局、死んでしまったら、それまでじゃないかな? そんなの、君達の自己満足でしょ?」
それまで、余裕の表情を崩さなかった美樹が、表情を険しくし、声を荒げた。
「・・・・・・」
その剣幕に、さすがの織莉子も、言葉を返すことができなかった。
「円環の理に導かれるから、穏やかに消えていける?…冗談じゃない! 残された家族はね、そんなことじゃ、全然、納得できないんだ! ただ、生きていて欲しかったんだよ! どんなにズルくても…自分の為だけに戦ってでも…それでも、生きていて欲しかったんだ…」
その気持ち…織莉子には、解る気がした。
父を失った時、美樹の言葉に近い感情を覚えた。
「だからね、ボクは、魔法少女の存在を知った時にね、決めたんだよ…もう、誰も死なせないって…少なくとも、さやかが守ろうとした、見滝原と、その住人、そして、魔法少女達は、ボクの手で、守り抜こうとね…」
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】 作家名:PN悠祐希