魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】
気がつくと、ボクは、寮から少し離れた場所にある公園の広場にいた。
すでに真っ暗だったが、よく知った場所…
なのに、やたらと空気が重く感じる…
なんとなく、息苦しさを覚える…
口の中が渇く…
耳鳴りのようなモノも聞こえるような気がする…
まるで、視覚以外の感覚が、何かを知らせているようだった。
それは、強敵を目の前に、試合開始の合図を待つ、そんな緊張感に近かった。
すると、暗闇の中に、ボウッと人の姿が現れた。だが、不思議なことに、その人の姿は、いっこうにハッキリと形を成さない。それでいて、数ばかり、どんどん増えていく…
「…違う! 人じゃない!」
そのことに気がついた時には、すでに周りを完全に囲まれていた。
人のような姿をしているが、あきらかに人ではない…
お化け?…妖怪?…
そんな、ありきたりな単語しか思い浮かばない自分の貧弱なボキャブラリーを呪ったが、そんなことは、この際どうでもよかった。
問題なのは…そのなんだか解らないモノが、迫ってきているということだった。
…襲われる!…
そう判断し、咄嗟に、辺りを見回す…
すると、幸運にも、足元に、木刀が転がっていた。
なせ?…と思う間もなく、それを拾い上げ、かまえる。
ほぼ同時に、周りを囲んでいたモノの一体が、襲いかかってきた。
やられる前に…やる!…
木刀で、力いっぱい、ソレを殴りつけた。ソレが、派手に後ろに倒れ込み、何体かを巻き込んだ。
殺してしまった?…だが、どういうわけか、そういう手ごたえは感じられなかった。それに、考えている余裕などない。次から次へと向かってくるソレを、とにかく叩きのめし続けた。
だけど…次第に、体力が尽きてきた。握力も低下し、握った木刀を掴んでいる感覚すらも薄れてきた。だが、先に尽きたのは、ボクの体力ではなく…木刀の耐久力だった。十何体目かを殴った際に、木刀が、手元部分で折れてしまった。半分以上の長さを残しているはずの折れた先の部分は、弾かれた勢いで、どこかに跳んでいってしまった。武器を、失った。
ソレ等が、ジワリジワリと迫ってくる…
正面を見ていられなくなり、思わず視線をそらす…
すると、少し離れた地面に、人が倒れていた。どうやら、この辺りで悪さをしていた不良集団の一人のようで、時代錯誤な派手な学生服を纏っていた。だが、問題なのは、そんなことではなくて…頭が、なくなっていた。
「…!」
さらに、良く見ると、もっと酷い状態にボロボロにされた身体が、いくつも転がっていた。
…あの人達も…こいつ等に?…
だとしたら、当然、自分も同じ目に…
死ぬ…殺される…
まだ、守れる自分になっていないのに…こんな所で…
嫌だ…死にたくない…助けて…
…さやか!…
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】 作家名:PN悠祐希