魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】
すでに夜…
二人は、《あすなろドーム》という競技場にきていた。
「ここなら、少しくらい騒がしくしても、外には影響ないはずだよ。だけど…本当にやるつもりかい?」
美樹が、そう訊いてきた。
「もちろんよ。さ、早く始めましょう」
織莉子は、そう言いながら、魔法少女姿に変身した。
「言っておくけど、『私』は、手加減というものを知らない。やるからには、本気でいかせてもらうよ」
美樹も、変身した。変身後は、一人称も変わるらしい。
それはさておき…昨晩は、ほとんど、さやかと同じに見えたが…よく見ると、それなりに違いがあるのが判る。
特に違うのは、まず、胸当ての形状。さやかの物が角や尖りのない丸みをもった柔らかな感じだったのに対し、美樹の物は角ばった感じで薄い割に無骨な印象を与える。
次に、下半身。さやかは青いミニスカートだったが、美樹は青いハーフパンツ姿だ。
それに、武器。さやかが護拳付きのサーベルだけだったのに対し、美樹は、日本刀のような片刃でありながら反りのほとんどない刀身の剣の他に、両前腕にナックル付きのアームガード、両脚…膝から下腿にも打撃力のありそうなフットガードを装備し、格闘戦にも対応しているようだ。
とにかく、お互い、すでに本気モードで、睨み合っていた。
開始の合図などない。どちらが先に動くか…それとも、隙を見せるか…それが、全てだった。
織莉子は、先手必勝とばかりに、魔法球を無数に作り出し、自分の周囲に展開させた。
「なるほど…それで、私の接近を防ごうというのだね」
「・・・・・・」
織莉子は、何も応えなかった。ただジッと、美樹を見つめるだけ。
美樹が、剣をかまえた…
「確かに、そこまで密に玉を展開されては、逆に私の速さは仇になる。普通に接近することは難しいかな…だけどね…」
その瞬間、美樹の姿が消えた。
そして…
「私には、こういう能力もあるんだ。昨日、見せてあげたはずだけど?」
そんな声…織莉子の、すぐ背後からだ。
「…!」
展開した魔法球の陣の内側。対応する間は…おそらくない…
「悪いけど、これで終わりにさせてもらうよ!」
美樹は、密着した状態ということで、左腕を織莉子の背中に当てるかのように前に突き出し、それに刀身を添わせるようにして、右手に持った剣を、大きく引いた…
「私の突きは、助走なしの密着状態でも、腰から上体の捻りにのせた腕の突き出しの速さだけで、魔獣を数体貫く威力がある…いくら簡単には死なない魔法少女の体ととはいえ、無事では…済むまい!」
…ヒュンッ…
刀身が空気を切り裂く音が響く…
同時に、織莉子の無防備な背中に、突きだされた剣の切っ先が、当たった…
…勝った…
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】 作家名:PN悠祐希