魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】
そう思った瞬間…
「残念だけど…私の勝ちよ」
織莉子が、そう告げた。
同時に、背中を刺し貫くはずだった切っ先が、唐突に止まった。まるで、分厚いゴムでも突いてしまったかのような、そんな感触だった。だが、織莉子の背中と、切っ先の間には、何もないように見える。少なくとも、周囲に展開している魔法球のようなモノな…
「…なっ!」
いや、あった。周囲に展開しているモノよりも、はるかに小さい…せいぜいパチンコ玉程度の大きさの魔法球。周囲のモノと比べ、あまりにも小さく、しかも、それ一個だけということもあり、今の今まで、まったく気がつかなかった。
そんな小さな玉が、剣の切っ先を、完全に受け止めていた。
「その魔法球…サイズこそ、そんなだけど、タンクローリーの特攻をも止められる衝撃吸収力と、その威力を確実に跳ね返せる反発力を持たせたわ」
つまり、突きの威力が強力である程、強力な反発が返ってくるということだ。
「ま、まさか…これで受ける為に、わざと私を自分の間合いに?…だけど、こんな小さな玉で攻撃を受け止めようだなんて…ありえないよ!」
「強いあなたに勝つには…これしかないと思ったから」
「…!」
次の瞬間、切っ先と魔法球の間で燻ぶっていた威力が弾け、美樹は、思いっきり後方にフッ跳ばされた。そこには、織莉子がはじめに展開していた、魔法球が…
「うわああああああああああああああああああああ…」
辺りが、爆音と爆煙に包まれた。その中で、美樹が、涙を流し、咳き込んでいる。しかも、思うように体が動かないようで、立ち上がることができない。
そんな 美樹に、織莉子が、立ち込める煙の外から、声をかけた…
「催涙性の粘膜刺激毒に、一時的に運動神経をマヒさせる神経毒を混ぜた、特殊煙幕魔法球よ。魔獣には、全く効果ないけど…こういう時には便利よね。とりあえず、命に支障はないから安心しなさい。今の体なら、数分程度で動けるようになるはずよ。でも、私がその気なら、魔法球に、爆裂弾や焼夷弾の性質を持たせることもできたわ。それは、憶えておいてね」
「あんな、マグレ当たりで…」
「それでも、勝ったのは、私よ。あなたの攻撃を予想し、防御し、攻撃を当て、戦力を削いだ…戦いの素人のはずの私が、剣道の達人であるはずの、あなたにね」
もっとも、これも、魔法の特訓の成果といえた。
織莉子が、特に熱心に行っていたのは、新たな能力の開発ではなく、今ある能力の強化。
その一つとして、まずは予知の精度と予知するまでの早さを上げること。。今では、戦いの最中に、その相手の行動を、かなり正確に予測できるようになった。
ちなみに、予知の精度を上げる訓練をしていたところ、コンマ数桁秒レベルで近い未来が見えるようになり、それ即ち、今現在を透視しているのと、ほぼ同じことであり、結果、千里眼の能力開眼という形となっていた。
そして、もう一つが、作り出せる魔法球の特性の種類を増やし、それを素早く生成すること。
つまり、パチンコ玉程度の大きさの玉で、相手の刀を受け止めるなど、その強化された能力あってこそ可能となった芸当だった。
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】 作家名:PN悠祐希