魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】
「これが、私の覚悟よ」
織莉子が、そう言い放つ…
「例え、戦いは素人でも、自分の持てる限りの力を使って、なんとしてでも勝利し、生き残ろうという、私の意思。魔法少女になった子達は、みんな、そうやって戦っているの…
その中で、命を落としてしまう子も、確かにいるわ。その子の家族は、永遠に、その子を探し続けなければならない悲しみと苦しみを背負うことになる。それは、とてもつらいことだわ。そんなことは、充分に解ってる…
それでも、私達には、自分の人生を懸けるだけじゃなく、大切な人を悲しませると解っても、叶えたい願いがあったの。奇跡を望んでしまったの。あなただって、すでに、同じ悲しみを、ご両親に味わわせるかもしれない立場になってしまったのだから、解るでしょ?」
「・・・・・・」
「だから…悲しくても、苦しくても…私達の生き方を、否定しないで。憐れまないで。そして、自分一人で、戦おうなんて、考えないで。例え、それが、あなたの願いだったとしても…いいえ、だからこそ、『協力』という形で、その力を、私達に貸して欲しいの」
美樹の願い…それは…
『魔法少女達に戦わせることのないよう、どこに、どんなに多くの魔獣が現れても、素早く確実に、途中で力尽きることなく、ソレを殲滅できる力が欲しい…
例え、この、あすなろ市にいても、見滝原に出現した魔獣を速攻で倒せるような、そんな力が』
それにより得た魔法が、《速さ系の能力》。戦いの際の目にもとまらぬ動作、次元跳躍系の瞬間移動、さらには、かなり遠くの魔獣出現を察知する能力、等々…
また、元々の資質は、美樹・さやかと同程度でも、『途中で力尽きることなく』という願いと、祈りそのものを魔法の能力に注ぎ込んでいる為、基本の魔力量も多い上に、燃費もすこぶる良いようだ。
それに、元々持ち合わせている達人的な剣道の実力が加わるのだから、まさに鬼に金棒である。
しかし、その強さも、織莉子の覚悟…目的の為には、人殺しに等しい行いも辞さない…恨まれても、憎まれても、絶対にあきらめなかった…そんな確固たる意志には適わなかった。
美樹に、それだけの覚悟がなかったからだ。
誰も、死なせたくない、悲しませたくない…その想いは、正しいものだ。だが、どんな立派な理由を持っていても、自分が行った戦いの先に、何があるかまで考え、時には悲しみを、時には苦しみを、あるいは、その結果に対する責任を、全て背負う覚悟がなければ、それは、ただの自己満足にすぎず、親切の押し売りでしかない。
それは、魔法少女になりたての頃の織莉子が陥っていた傲慢さと同じだ。
だからこそ、織莉子は、美樹と、一対一で臨もうと考え、一人でやってきた。戦うつもりはなかったが…
織莉子は、まだ晴れぬ煙の中にいる美樹に…
「終電に間に合いそうだから、私はこれで帰るわ。今夜も、魔獣狩りに出るつもりよ。場所は、私の予想では、ビジネス街の大通り。かなり強力な魔獣が、結構な数現れそうなの。もちろん、私達だけでも、問題なく対処できるけど…良かったら、手を貸してくれないかしら」
そう言い残し、あすなろスタジアムを後にした。
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】 作家名:PN悠祐希