魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】
数日後…日曜の翌朝…
「あなた達! また、お台所に置いてあった物、勝手にあさって食べたでしょうっ!?」
まどかが、怒髪天を突く勢いで声を荒げながら、美国邸の表の庭に逃げ出した杏子と ゆまを、追いかけまわしていた。
「つ、つい、習慣で…」
杏子が、苦笑いしながら、そう答えた。
「食べ物は、自分で確保すべし…それが、キョーコの教えだもん!」
ゆまも、杏子の後にくっついて走りながら、そう弁解した。いや、完全に開き直っている。
「ごはんも、おやつも、ちゃんと食べてるでしょっ! なのに…もう〜っ! どういう生活してきたのかな〜っ!」
そんな二人の言葉に、いっそう大きな声で、まどかが叫んだ。
織莉子とキリカは、裏庭のテーブルでお茶をしながら、そんな様子を、聞こえてくる音声だけで楽しんでいた。
「日曜の朝から…にぎやかね」
織莉子が、嬉しそうに、そう言った。
「ま…私には、少しうるさいくらいだけどね…」
キリカも、そう応えた。それでも、言葉とは裏腹に、その表情は笑顔だった。
「…近所迷惑になるし…正直、鬱陶しいわ」
ほむらが、言葉どおり、少々機嫌悪そうな面持ちで、自分のティーカップを口に運ぶ。
「あら…私は、こういう雰囲気、好きだけど…楽しいじゃない。それにしても、とても美味しい紅茶だわ…」
マミが、満面の笑顔で、そう応えた。
「…って、君達さぁ…さも当たり前ですって態度で、私と織莉子の憩いの場に、勝手にいないでくれるかな!」
キリカが、ほむらとマミの…ここに居ることも含め、その態度に、そう声を荒げた。
実は…先日の戦いの後…
「部屋、余ってるって言ってたわよね? 私も、一人暮らしだから…どうせなら、あなたの家に泊めてもらえないかしら? もちろん、宿泊代は払うわ」
ほむらが、織莉子に、そんな話しを持ちかけ…
「え?…な、なら私もっ! 私も、お願いしますっ!」
と、マミまでもが、そう言いだし…
「じゃあ、そちらの…サクラさんでしたっけ?…の意見を参考にして…『一泊・ごはん・おやつ付きで、グリーフシード一個』…という条件でどうかな、織莉子さん?」
まどかが、勝手に、そう提案し…
「…まあ、いいわ」
と、織莉子が同意し、泊めてもらいたい者達全員が、その条件を了承したことにより…
その晩から、杏子と ゆまだけでなく、ほむらとマミまでもが、美国邸で寝泊まりすることになってしまった。
もっとも、魔獣が出現しなかった場合、一人につき一晩グリーフシード一個は、織莉子達としても、さすがに必要ないのと、何より払う方はしんどいだろうということで、魔獣を狩った際に二・三個提供するという条件に、変更はされていた。
ほむらとマミは、食費代だけで良いなら現金でも…と言っていたが…正直、織莉子としては、杏子や まどかが、ああ言わなければ、無償で泊めるつもりでいたのだ。
ただ、無償で奉仕してくれている まどかの手前、他の者達に対しても、『気持ちがあるのなら戴いておく』という態度をとらざるをえなかった。それ程に、経済的には余裕はあった。
なんにせよ、しばらくは、助けられた恩や、借りの分で…ということで、済まされてはいるが。
まあ、それはさておき…
キリカに言わせれば、このティーブレイクは、まどかが提案した条件の《おやつ》には含まれていない。
ちなみに、キリカは、入り浸っているとはいえ、それでも、家はあり、両親も健在である為、通いのままだった。なので、美国邸に住人が増え、織莉子を独占できなくなってしまったことが、少し不満だったりする。まどかに対しては、なぜか、なんとも思わなかったのだが…
作品名:魔法少女おりこ★マギカR 第2幕 【第3話】 作家名:PN悠祐希